Green Day "Revolution Radio" レビュー
Green Dayの12枚目のアルバムは、彼らの作曲能力の高さと2010年代のロックの悪さが化学反応を起こし生まれた凡庸なアルバムだ。
収録曲のほとんどは悪くはないロックソングだ。確実にいい曲だと言えるのは"Bang Bang","Revolution Radio",そして"Still Breathing"くらいであるが、ほかの曲もまあまあ耳に残りやすいメロディが一つはあるしギターソロはどの曲においてもとてもいいものになっている。車の運転中にラジオで聴くくらいなら全く問題はない曲ばかりだ。
けれども印象には残りづらい曲が多いように思う。Fall Out Boyのような2010年代の売れ線ロック的サウンドは元から微妙なので彼らの長所のキャッチ―さでもどうしようもなかったようだ。正直アルバムを聴き終えてすぐでも、収録曲の半分ほどは全く思い出せないし、同じ時代の別のバンドの曲だと言われても信じてしまうだろう。Green Dayらしさがないわけではないのだが、それ以外のところが無個性なのである。
このアルバムを微妙なものにしているのは、「パンクらしさ」を無理にでも押し出そうとしてしまったことだろう。結局のところGreen Dayはずっとパンクバンドとして活動してきているわけだし、"Bang Bang"のように社会問題に警鐘を鳴らす曲もある。しかしアルバムジャケットやMVなどは「パンクらしさ」を前面に押し出し、このアルバムが正真正銘のパンクアルバムだとアピールしている。普通のポップロックアルバムとしてはまあまあいいアルバムなのだが、パンクアルバムとして見ることを半ば強制されているため、パンクにしてはポップすぎるという印象を持ってしまった。
「パンクらしさ」を売りにしようとしているのはバンド側も同じである。しかしそれはバンドの曲作りに無駄な制約をかけてしまっているように思える。"Bouncing off the Wall"や"Youngblood"は無理してパンクらしくしようと作った曲のように聴こえる。そのせいでしまむらのパンク風Tシャツみたいに、情熱もなにもない安い偽物という雰囲気を与えてしまっている。
残念な点は彼らがそれまでのアルバム、特に"American Idiot"で見せてきたミュージシャンとしての成長をすべて捨ててまでパンクらしさを保持しようとしたように思えることだ。彼らがもっと素晴らしい曲を作れることがわかっているからこそ、その「パンクらしさ」だとかがシンプルな曲を作る言い訳にも聞こえてしまうのだ。
音楽面に話を戻すと、全体的にボーカルのミックスが変だと感じた。ギターで音が潰れているのか、それともただ小さくミックスされているのかは知らないが聴きづらかったし、特"Say Goodbye"のエフェクトのかかったヴァースは何を言っているのか9割分からなかった。それと、"Too Dumb to Die"などいくつかの曲でスネアの音がひどく乾いた音をしていてとても耳についた。Mettalicaの"St. Anger"ほど酷いものではないが、首を傾げることにはなった。最後の曲は"Good Riddance (Time of Your Life)"の(かなり悪い)二番煎じのようで、アルバム全体の後味を悪くしている。
全体的にはそこまで悪くはないし、聴いて特に嫌な思いはしないだろう。おすすめはしないが作業用に聴くのにはいいかなと思う。シングルカットされた曲、特に"Bang Bang"はいい曲なので、それを聴いて満足するのが一番いいかもしれない。5/10だ。
スコット執筆