Afrika Bambaataa & Soulsonic Force "Planet Rock: The Album" レビュー

 80年代ヒップホップでもっとも重要なアルバムの1つであるこのアルバムは、少しの経年劣化を感じさせながらも、現代に通用する側面と革新的なサウンドを持ったパーティアルバムだ。

 

 ヒップホップや音楽史全体にAfrika Bambaataaと彼の作った曲、特に"Planet Rock"の与えた影響は、少しでもサウンドだとかジャンルだとかの進化に興味があれば知っているであろうことなので省くが、簡単に説明するとジャンルを融合させ新しいジャンルを作り出し、それからの音楽にも大きく影響を与え、みんなが808を愛するようになったということである。このアルバムはそのような、彼とSoulsonic Forceのヒップホップ開拓期を彩ったシングルたちでほぼ構成されたアルバムである。

 

 けれども聴いて何よりも驚いたのは、ヒップホップ最初期の音楽でありながら、それを感じさせないサウンドであったことだ。この時期にありがちなファンクやディスコ風のビートはなく、テクノ風の電子的なビートと機械的なドラムが近未来的な雰囲気を醸し出しているし、特に暴力的な音のスネアと808のカウベル、Fairlight CMIのオーケストラヒットなどによって90年代のクラブ音楽にも聴こえてきてしまうほどだった。パーティソングで埋め尽くされたアルバムであるが、今のクラブやらディスコやらで流れていても全く違和感の湧かないようなサウンドである。

 

 それでいてサウンドにバリエーションがあるのもよかった。アルバム自体も最初の3曲は電子的でそのあと2曲がRun-DMC風で、そのあとの2曲は当時のデトロイトテクノ風であり飽きないようになっているし、それぞれの曲もユニークな点が少なくとも1つはあるものになっている。曲は途中でドラムブレイクがあったり新しいパートになったりと変化がちゃんとあり、つまらなさを感じなかった。

 

 しかし問題点も少しあった。ラップは曲のフロウを続けるためのもので歌詞などは深く考えない方がいいし、シングルを集めたからという理由もあるのだが半分くらいの曲で彼らが自己紹介をしているのが少し気になった。また7曲中最初の5曲がシングルだったものなのだが、その後の2曲とのクオリティの差が目立つものになっていたし、パーティソングであり元が12インチであったことも考えるとしょうがないのだが全体的に曲が長く感じた。ミックス面でも、ドラムが80年代らしくデカい音なのは好きではあるものの、長く聴いていると疲れてしまった。

 

 だがこのアルバムは時代的背景を考えると超名盤であるし、それを抜きにしても(少しの問題点はあるにしろ)新鮮なサウンドを持った曲たちが集まったアルバムである。ヒップホップファンやテクノファンだけでなく、全ての音楽好きが一度は体験するべきアルバムであると思う。8/10だ。

 

スコット執筆