集団行動 "集団行動" レビュー

 このデビューアルバムはキャッチーかつポップであるが残念な点も多く見受けられるアルバムであった。

 

 このアルバムの良かったと思う点は、全体的にポップで、それでいて爽やかなロックぽさもあることだ。"バイ・バイ・ブラックボード"のスムーズなリフや"AED"のギターソロはとてもいいものになっているし、ボーカルのメロディはどの曲においてもキャッチーである。ボーカルの声は特徴的でありながらも、このアルバムのサウンドにとても合っているように思う。

 

 サウンド面は全体的に悪くはなく、ポップなインディーらしいものになっているし、メロディセンスとアルバム全体の音の彩り豊かな点からは、様々な音楽に影響を受けそれを土台に自分たちの音楽を作ろうとする姿勢が感じられた。正直少しありがちなロックサウンドではあったが、その中にも独創性が少なくとも感じられたので、これから進化していくことに期待しよう。

 

 曲自体も"ホーミング・ユー"や"土星の環"など悪くはない曲がほとんどであったと思う。しかしスムーズなギターリフから遅く音もよくないサビに行く"バイ・バイ・ブラックボード"や正直必要のない"バックシート・フェアウェル"のコーダ部など、構成では首を傾げるところもあったし、ディストーションのかかったギターの音が全体的に悪かったように思う。

 

 けれども自分にとって1番残念だった点は歌詞だった。問題がない曲もあるのだが"ホーミング・ユー"や"AED"は歌詞があまりにも1つのことを中心に書きすぎていて、それをメタファーに書いたラブソングなのか本当にAEDとかについて歌っているのかわからなくなった。もし前者なら曖昧すぎるし、後者なら直接すぎるのでどっちだとしてもマイナスである。"ぐるぐる巻き"のサビや"バックシート・フェアウェル"の感情的なところの歌詞(「1メーターって何km」のこと)は正直言葉のチョイスを疑うものだった。

 

 また"東京ミシュラン24時"は曲も歌詞もよくなかったし、この曲のせいでアルバム全体が何かの冗談みたいに見えてしまった。歌詞は控えめに言っても子どもっぽく、このバンドの強みであるキャッチーさもなかった。ちょっと可笑しな感じを目指したのだろうが、そこまで突き抜けてアホっぽいわけでもないので真面目にこれをやっているのかとも思ってしまう。

 

 マイナスなことばかり書いたが"ホーミング・ユー"など好きな曲もあったし、このバンドに才能があることは感じられた。ただこのアルバムはもっといいものになれたはずだと思う。いい点はあるのだが、曲もアルバムも総合的にみると微妙なものになってしまっていて、とても残念なアルバムになっている。5/10だ。

 

スコット執筆