酒井和歌子 ”青春通り” レビュー

SAS-1127 19686月発売

今回は、未公開映画のサントラ盤 青春通り を取り上げます。

東京映画・東宝配給作品「大都会の恋人たち」の挿入歌のレコードです。このレコードは、小ヒットしたものの、この2曲が使われるはずの映画は、制作中止となり、結局公開されることはありませんでした。

 

A面:青春通り】

作詞:万里村ゆき子 作曲:戸塚三博 編曲:大西修

サビがあまり目立たず、キャッチーな感じはあまり無いですが、明るくて聴きやすい曲だと思います。イントロは爽やかでよくまとまっていて印象的です。それに対し、アウトロは短く、あまりにもあっさりしているため、物足りなさを感じます。

 

B面:花と走ろう】

作詞:万里村ゆき子 作曲:戸塚三博 編曲:大西修

A面よりテンポが良いですが、抑揚があまりない分、やや単調に感じます。トレモロを強調したイントロや、リズムをはっきりと強調した演奏が小気味良いです。ただ、昭和43年の曲には聴こえないような演奏で、昭和30年代の楽曲という印象です。間奏でいきなり高音のコーラスが入るところに違和感がありますが、それ以外は青春歌謡の王道的な曲調です。

 

【全体を通して】

両面とも、王道的な青春歌謡(学園ソング)です。歌い手の技量に関係なく歌えるようなシンプルな曲と、当時流行していたGSとは対照的な素朴なサウンドです。童謡のような美しい曲調と詞を楽しみたい時にはうってつけの楽曲だと思います。

 

【終わりに】

昭和40年代に入ってからは、徐々に青春歌謡の勢いが落ち、昭和40年代後半には、純粋な青春歌謡と言える楽曲は殆んど無くなっていきました。昭和50年代以降にも壷井むつ美「自転車通学」(昭和54年)など、青春歌謡路線の楽曲はあるものの、サウンドが明らかに変わっているため、青春歌謡全盛期の楽曲とは全く異なった印象を受けます。そのためこの「青春通り/花と走ろう」は、青春歌謡の中でも後期のものと言えると思います。

青春歌謡は、現代の若者の流行歌に通じる要素が少ない分、昨今の昭和歌謡ブームの中でも特に注目されませんが、良い楽曲も多く、追及する価値はあると思います。