タイアップラップソングの世界:アダムス・ファミリーとラップキャリアの終焉

 (この記事のアイデアYouTubeで活躍するレビュアーTodd in the Shadowsにインスパイアされたものです)

 

 アダムス・ファミリーを覚えている人は多いでしょう。当時観たという人も、レンタルやテレビでの放映で観たという人も、この映画にいい思い出を持っているはずです。結局おもしろおかしいコメディ映画で子どもも一緒に観る大人もどっちも楽しめる映画ですしね。けれども、そんなアダムス・ファミリーシリーズにはタイアップラップソングが存在することは、ご存じない方がほとんどでしょう。

 

 アダムス・ファミリーが公開された1991年、アメリカはラップブームの始まりを迎えていました。クロスオーバーヒットが多く生まれた1990年からラップはポップカルチャーの中心となっていき、現在までその人気は成長し続けています。それを考えれば、映画に注目を集めるためにタイアップラップソングがあるのは納得できます。しかし、そのタイアップソングたちは、ラップキャリアの終わり、ラッパーの輝かしい時代の終わりを告げるものでもあるのです。

 

 まずは1作目、「アダムス・ファミリー」の場合を見ていきましょう。公開前年に大ヒットを記録したラッパーといえばヴァニラ・アイスとMCハマーですね。ラップキャリアの始まりが終わりでもあったヴァニラ・アイスの話は置いておいて、この映画のタイアップソングはMCハマーが担当しました。

 MVはMCハマーがギロチンにかけられるところから始まります。キャリアはこんな終わり方しませんでしたが、むしろ一瞬で済む終わり方の方がよかったかもしれませんね。ただ生首MCハマーは正直戦争の映像よりも気持ち悪くて嫌でした。曲はアダムス・ファミリーのテーマを引用している感じですが、なーんか安っぽい音でちょっと腹が立ちます。ギターの音は子ども向けおもちゃみたいな音で、ストリングスのサンプルは古臭さを感じさせるものになっています。テーマソングをサンプリングしているからなんでしょうけどテンポが遅く、ハマーのまあまあ下手なラップも相まってタルい印象です。同じくMCハマーが担当したタコベルのCMソングの方がマシです。MCハマーはこの後ギャングスタラップをやろうとして失敗。自己破産を申請して"U Can't Touch This"しか覚えられていない人間になりました。

 

 では「アダムス・ファミリー2」はどうでしょうか。この映画では"Whoomp! (There it is)"で大ヒットしたラップデュオ、Tag Teamがタイアップソングを作りました。え、知らない?

 正直これはまあまあ好きです。アップテンポでアホっぽいのでね。MVもいい感じにちゃっちく、ウェンズデーがKick itって言ったりパグズリーがノリノリだったりでいいですね。ただすっごいでかい問題点があるんですよ、これ。上記した大ヒット曲とほぼ同じなんですよ。もちろん歌詞は違うんですけどそれでも同じなことに変わりはないんですよ。これからわかる通りなんですが、この人たち一発屋でしかもその一発の焼き直し、というより焼き増しをすることを続けていった感じでした。今は特になにもしていないみたいです。

 

 では最後に2019年のアニメ版アダムス・ファミリーを見ていきましょう。これはトラップミュージックをメインストリームにしたミーゴスが担当し、自分は知らないアーティスト2人(Karol GとRock Mafia)とどこにでも出てくるマリファナおじさんスヌープ・ドッグがフィーチャリングされています。

 あー・・・。なんかフツー・・・。アダムス・ファミリーのテーマをサンプリングしているせいでちょっと(かなり)アホっぽくなっていますがそれでもちょっと・・・。Mess With Meを3回連続使って韻を踏むというやる気のなさもあれだしフィーチャーも特筆すべきことはない、ただの凡庸なトラップポップになっている曲ですね。3分未満なんですけど繰り返しも多くて体感5分くらいでしたね。ミーゴスはカルチャーIIから人気が下がり始め、今はソロ活動を全員が頑張っているみたいです。

 

 2022年公開の続編はラップ系じゃない人(クリスティーナ・アギレラ)がテーマソングをしたので書きも聴きもしません。今回紹介した3曲は正直最近聴いたものの中で一番疲れました。次回のアイデアはないので書くとしたらテキトーに書きます(おい)。Todd in the Shadowsのチャンネルはぜひ見てください。

 

スコット執筆