アウト・キャスト ”愛なき夜明け” レビュー
品番:SN-608
発売:1968年1月10日
このレコードは、アウト・キャストの5枚目で、1968年3月の解散前最後のシングル。解散後すぐに1名を除き別のメンバーで再結成され、1枚シングルをリリースしている。シングルリリースの順番は以下の通りとなっている。
1.友達になろう/気ままなシェリー 発売:1967年1月25日
2.愛することは誰でもできる/電話でいいから 発売:1967年4月
3.レッツ・ゴー・オン・ザ・ビーチ/エンピツが一本 発売:1967年7月10日
4.一日だけの恋/僕のそばから 発売:1967年10月15日
5.愛なき夜明け/ふたりの秘密 発売:1968年1月10日
6.空に書いたラブレター/君を慕いて 発売:1968年6月5日
4枚目のシングルまで在籍していた穂口雄右氏が津々美洋とオール・スターズ・ワゴンに加入するために脱退したため、5枚目の「愛なき夜明け」では、4人組になっている。
【愛なき夜明け(作詞:橋本淳 作曲:筒美京平)】
メンバー自作曲と洋楽カヴァーが多いアウト・キャストのレコード曲の中では、数少ない外部の作家に依頼した作品。メンバーの意志ではなく、事務所かレコード会社の方針で依頼することになったらしい。
テイチク・レコーディング・オーケストラの演奏が目立ち、バンドのみで演奏している「一日だけの恋」等とはかなり異なった印象を受ける。間奏以外ではギターの音もあまり目立たない。ただ、タンバリンやドラム、ギターの音を意識して聴くとアウト・キャストらしさを感じられる。この曲にタンバリンはいらない気もするが、リズムの強調には役立っている。歌は感情的で、泣きながら歌っているような感じだ。
GSの王道に近いような曲調のバラードで、真っ向からヒットを狙っているような感じがする。作曲者が同じで時期も近いためか、サビが若干ザ・ワンダースの「赤い花びら」(1968年3月発売)に似ている感じがする。
正直、他のアウト・キャストの楽曲を聴いた時の様な新鮮味や衝撃はあまり感じられなかったが、壮大な雰囲気のイントロや曲調に魅力を感じた。
当時、テレビではミリタリールックでこの曲を演奏していたらしく、多分映像は現存していないが見てみたい。
何故か1968年にテイチクから発売されたEPの中に、この曲をボサノヴァにアレンジしたカヴァー版がある。
【ふたりの秘密(作詞:大野良二 作曲:大野良二)】
こちらは、A面と違ってバンドのみの演奏と思われる。(レコードもA面にあった「テイチク・レコーディング・オーケストラ」の表記が無い)
1967年11月発売のLP「君も僕も友達になろう」にも収録されている曲ですが、LPとは別音源です。アレンジが変わっていて、LP版に比べテンポは遅くなっていたり、弾き方(叩き方)が違っていたりと聴き比べるのも面白い。大まかに区別するとシングル版は静かでLP版はシングルよりやや激しめという印象で、昼聴くならLP版、夜中に聴くならシングル版という感じがする。
LP版よりも落ち着いた仕上がりで、良い感じのムードが出ている。お洒落でバンドのセンスの良さが感じられる作品だ。
【終わりに】
30年以上前はこのレコードも良い値段が付いていたらしいですが、現在の並品の価値は約1000円で、運が良ければ500円程で買えるので、手が出しやすいです。ジャケットの写真を囲む枠組みやタイトルの書体がいかにも60年代後半といった感じなので、ジャケをレトロなインテリアとして飾るのも良いかもしれません。