レコード雑談① GSの再発シングルはどのくらいあるのか?

レコード屋やネットオークションを覗くと、たまにGSの再発盤を見かける。超有名曲からマイナーなものまで色々な再発盤を見かけるが、それらの再発盤は一体どのくらいあるのだろう… この疑問を解決するために、情報をまとめる事にしました。

ここにおけるGSの再発盤は、両面の収録曲がオリジナル盤と同じ物をさし、別々のシングルの収録曲を1枚にまとめたベスト盤は扱わない事とします。また、CDやLPなどの再発盤は省き、シングルレコードのみに限定しています。

 

東芝レコード THE復刻盤シリーズ

 発売:1982年

 5枚のシングルをまとめて3000円で販売されたシリーズで、GSだとザ・ゴールデン・カップスザ・ワイルド・ワンズのシングルが復刻されたらしい。

1982年頃に”廃盤ブーム”というものが起こり、それに合わせて発売された。GSマニアに向けたものという感じではなく、GSブームの頃に聴いていたあの曲をまた聞きたいという需要に合わせたラインナップだ。

現在、この再発盤のワイルド・ワンズのシングル5枚や、カップスの「長い髪の少女」や「愛する君に」は、オリジナル盤よりも入手が難しいという普通逆じゃないのかと思う状況になっている。

 

 

キングレコード キングオリジナルシングル復刻盤シリーズ

 発売:1983年

 3枚のシングルをまとめて1セット1,800円で販売されたシリーズで、10種類あるらしいが、その中でGSのシングルを含むセットは3種類ある。ラインナップは以下の通り。

  ③「GS」:君なき世界、ウォーキン・ザ・バルコニー、愛の伝説

  ④「シャープ・ホークス」:ついておいで、遠い渚、海へかえろう

  ⑧「寺内タケシ」:ブルー・スター、ユア・ベイビー、涙のギター

この中だと③「GS」が現在最もよく見かけるから、最も売れたのではないだろうか。GSファンが心ときめく選曲で、ウォーキン・ザ・バルコニーや愛の伝説は、当時入手が困難な盤だったため、需要もあっただろう。

寺内タケシとバニーズのシングルは「ブルー・スター」のみだが、「太陽野郎」や「運命」、「レッツ・ゴー・シェイク」といった大ヒット曲を差し置いてなぜこのシングルが選ばれたのだろう。

⑧「寺内タケシ」の「ブルー・スター」以外の2枚は寺内タケシとブルージーンズの曲です。

 

東芝EMI ザ・ホワイト・キックス アリゲーターブーガルー

 発売:1995年

 単品で1,200円で発売された復刻盤で、ジャケットに新たに解説文が加えられたり、盤のデザインが異なっているが、ジャケットはオリジナル盤に近い物になっている。

オリジナル盤は最近だと価値が下がってきていて、3000円前後で買えたりする。いずれこの再発盤の定価と同じ様な値段でオリジナル盤を買える日がくるかも。

 

・CULT GS 7inch Box

発売:2000年頃

GSの10枚のシングルを1箱に収めて15,000円で発売されたBOXセットで、3種類発売された。3種類購入すると、ザ・ダイナマイツのユメがほしいのシングルが貰えたらしい。このセットは、GSマニアに向けた様な物で、懐メロ番組の定番曲はほぼ入っていない。

3箱揃えると、デ・スーナーズのシングルをコンプリートできたり、ザ・ダイナマイツのシングルの5枚ある内の4枚が手に入ったりと、なかなか充実したラインナップになっている。ジャケットも盤もオリジナル盤と少し違う点はあるが、再現度が高いので、オリジナル盤は高くて手が出ないという場合はこのBOXセットの復刻盤を買うのも良いと思う。

20年以上前の物だが、現在でも中古盤をレコード屋やネットオークションでよく見かける。このBOXセットのレコードは、すべてスリーブが共通の物になっているが、スリーブをオリジナル盤と同じものに差し替えてオリジナル盤っぽくしてネットで売るという詐欺まがいの行為をする者が稀にいる。

 

・CROWN RECORDS GROOVY 60’S SINGLES‘COLLECTION

 発売:2011年1月20日

 1960年代にクラウンレコードから発売され、現在プレミアが付いているシングル10枚を復刻したBOXセットで、GS単独のシングルとしては、ザ・プレイボーイが2枚、リンガースとザ・ターマイツが各1枚収録されている。ザ・プレイボーイのシングルはすべてが10万円以上する様なレア盤で、GSのシングルの中でも入手難易度が特に高い。そんなプレイボーイの再現度の高い復刻盤が2枚も手に入るのだから、このBOXセットの魅力は高いと思う。

 

・GS(Groovy Showa)45 RPM Treasures

 発売:2017年

 これはBOXセットではなく、歌謡曲やGSの復刻盤を1枚ずつ発売されたシリーズだ。GSだと、デビィーズやトーイズ、モージョの1stシングルがリリースされた。

 

終わりに

(1976年にズーニーヴーの再発盤が出ていて、それを今回入れるか迷ったのですが、オリジナル盤と比べ、A面とB面の曲が入れ替えられているので、省くことにしました。)

GSのシングルコレクターは、オリジナル盤に拘るので、オリジナル盤の情報をまとめた書籍やサイトは多いのですが、再発盤の情報をまとめたものは意外と少ないのではないかと思って今回記事にしました。情報に抜けや間違い、未記載の盤があるかもしれないので、今後も資料を漁って何か新しい情報があれば加筆修正していこうと思います。

まだ、復刻されていないGSのレア盤は沢山あるので、今後も再発盤が出るかもしれないですね。

下に再発盤のリストを載せておきます。







最悪邦題を抱きしめよう:Vampire Weekend  「吸血鬼大集合!」

Vampire Weekend: Vampire Weekend Album Review | Pitchfork

 いきなり始まりそしていきなり終わる予感のある新コーナー、最悪邦題を抱きしめようのお時間です。記念すべき第一回はアメリカの名門大学からポロシャツを着て世界に飛び立ったバンド、ヴァンパイア・ウィークエンドのデビューアルバム"Vampire Weekend"の邦題、「吸血鬼大集合!」です。

 

 これ、なにがダメかは言わなくてもわかりますよね?いや、たしかにヴァンパイア・ウィークエンドのデビューアルバムは遊び心と若々しさが溢れるポップなアルバムなんですよ。こんなちょっとふざけた感じのタイトル、付けたくなるのも、わかるよ。だからって、ねえ?これはないんじゃないですかって話。多分、ヴァンパイア・ウィークエンドのウィークエンドを、ジャケットにある感じの週末パーティだと捉えて、「大集合」なんて言葉にして、それで若々しさを「!」に託したんだろう。まあわかる。

 

 けど理解できないのは、これ、全体を見て、読んで、声に出して、「よし!」なんて思ったことなんだよ。だってさ、一つ一つの部分はまあ許せるんだけど、全部通すとまあダサい。なんかレンタルでしか観れないようなB級ホラーのキャッチコピーみたいじゃない?それか、地元の町内会が頑張って企画したハロウィンイベントのチラシに場所を埋めるためだけに入れられた文章みたいじゃない?どっちみち、ダサいんですよ。

 

 なんか、ヴァンパイア・ウィークエンドのヴァンパイア部分を訳した、いや残したのがいけなかったのかもしれない。吸血鬼って言葉のせいでB級感が5000倍になっている感じがありません?けど、ヴァンパイアのままだと、なんかトワイライト的なゴスバンドみたいになるし・・・。「血を吸うやつ大集合!」・・・?いや、それは蚊祭りじゃん。絶対元のタイトルを日本語訳した時点で駄目だったんだよ。そのままさ、「ヴァンパイア・ウィークエンド」で良かったんじゃない?ねえ?良かったよね???????それが嫌でも、もっとどうにかなったんじゃない???????ねえ???????

 

 このアルバム自体は実際評価も良く、ヴァンパイア・ウィークエンドは2008年もっともホットなインディーバンドになりました。曲とかには全く邦題は付けられておらず(正直ケープ・コッド・クワッサ・クワッサってタイトルに対抗はできない)、さらなる犠牲は生まれませんでした。よかったねえ。その後のアルバムでどんどん評価を伸ばしていき、邦題も付けられずまともなタイトルばかり。そしてほとんどの音楽サイト(ウィキペディアですら)ファーストアルバムの酷い邦題を忘れ、彼らはポロシャツを捨て、カーディガンの似合う大人な音楽を演奏していくのでした・・・。ハッピーエンドだね。

 

 追記:これについて調べている途中、アルバムの宣伝文句みたいなのもたくさん見たんですけど、「南国気分!」とか「脱力アフロサウンド」みたいなこと書かれてて、う~ん今見るとちょっと差別ちっくねって思ったりしました。実際彼らも当時そういう関連で批判されてたしね。

ビートルズ最後の曲を聴いてみて

The Beatles' Final Song “Now and Then” Announced | Pitchfork

 出ましたねとうとう!アンソロジー期から存在が噂されていた「ビートルズの」Now and Then! いやあビートルズのロストメディアの一つだったのにまさか日の目を見るとは・・・。感慨深いですねぇ。しかも歌詞が「今もこれからも/君がいないことを哀しく思う/今もこれからも/君にそこに居てほしい」みたいな感じで!お涙ドバドバ!ジョンがいなくなって、それから十数年後彼のデモテープに残った3人で音を付けて、そのあとジョージが亡くなって24年くらい経ってまた戻って完成させて・・・。いい話~!

 

・・・って言いたいんです。言いたいんですよ。実際僕は嬉しかった。「ビートルズ」はもう終わって、あとはアウトテイクや没曲に新しいものを見出し、リマスターにまた驚かされる、そうだと思ってたんですよこれからはずっと。けどそうじゃなくて、それが嬉しかった。ジョンだけじゃなくジョージもちゃんといるのも、しっかり「ビートルズ」なんだなって思えて、嬉しかった。けど、けれども、何かが足りない、何かが違う気がしてしまうんです。ビートルズだけど、ビートルズじゃない感じ。これはなんなんでしょう?それをこの記事では、ちょっとずつ考えていきます。

 

 最初聴いた印象は、実はあんまり良くなかったんです。なんかジョンのソロ曲って感じがどうしてもしちゃった。あんまりポール、リンゴ、ジョージのインプットが無い感じ。アンソロジーシリーズのために新録されたReal LoveやFree as a Birdは、ちょっとモダンになっていても、ビートルズって感じがしたし、どっちもにあったハーモニーも、ありはするけど弱すぎる感じ。しかもなんかキャッチーさもあんまないし、ビートルズっぽい斬新さもあんまり感じなかったんです。

 

 けど、何回か聴いていくとそれも変わっちゃった。ああ、ビートルズだなって思っちゃった。違和感の原因も分かったんです。それは「ビートルズの新しい音楽」だったんですよ。僕は今までずっと、ビートルズ大好き人間でした。これからもそうです。いろんな曲も聴いてきて、彼らのいろんなスタイルに触れてきた、それが違和感の原因だったんです。今まで「ビートルズの音楽はこういうものだ」と思ってきた、けどNow and ThenはTwist and ShoutでもFrom Me to YouでもThink for YourselfでもTomorrow Never KnowsでもI am the Walrusでもなかった。Sgt. PeppersでもLet it beでもAbbey RoadでもYellow Submarineでもなかった。Free as a BirdやReal Loveですらなかった!だからなんです。だから違和感を感じたんです。Now and Thenは「新しいビートルズ」なんです。それはただ新曲だからってことじゃない。この曲は1970年にビートルズが解散したときのものでも、1980年にジョンが死んだときのものでも、1995年にジョージ、ポール、リンゴが3人で録音しようとしたときのものでも、2001年にジョージが死んだときのものでもない。2023年の中で生まれた新しいサウンドなんだと思います。だから違和感があった。今まで触れたことのないビートルズだったからなんです。

 

 もう自分は、Now and Thenを受け入れました。ビートルズの曲だと受け入れました。もう、ジョンの声にポールが声を重ねることも、リンゴがシンプルながら味のあるドラムをのせることも、ジョージがブルースに学んだギターリックを弾いてみせるのも、これから起こらないってことも、受け入れました。「ビートルズ最後の曲」、こんな重要な任務を、Now and Thenは全うできたと思います。

 

 ビートルズの歴史はこれからも続いていくでしょう。まだデラックス商法も続いて、リマスター商法も続いて、アップルtvかなんかでドキュメンタリーが出て・・・こんな調子で続いていくでしょう。けどこれでバンドは、本当におしまいなんでしょうね。なんどもビートルズは彼らの長くて豊富な歴史にピリオドを打ってきました。けどそれも、もう終わりなんでしょう。これで、おしまい。この曲で、おしまい。もう、なにかが書き加えられることがないのは、少し悲しい気がします。そう考えると、Now and Thenはいいピリオドじゃないでしょうか。「今もこれからも/君がいないことを哀しく思う/今もこれからも/君にそこに居てほしい」、なんて気の利いたことを最後に言いやがって。そんなことを思いながら僕は、目に涙を浮かばせていました。

ザ・ガリバース ”赤毛のメリー”

久しぶりにブログを更新します。今回レビューするシングルは、ザ・ガリバースの「赤毛のメリー/ダークな瞳」です。

品番:EP-1114

発売:1968年7月1日

購入:2023年5月

 

[レコードについて]

ザ・ガリバースの1stシングルです。この曲の発売後に2度シングルリリースの予定があったものの、発売には至らなかったため、これが唯一のシングル盤です。

このレコードには、2つ折りの歌詞カード(ジャケット)とスリーブが付属しています。60年代後半の東芝は歌詞カードに説明文を書いたり書かなかったりしていますが、このレコードにはそこそこの文字数の説明文が書かれています。デビュー盤であり、GS全盛期でもあるため期待されていたのでしょう。

内容は主に、ウエスタンカーニバルでデビューした事、モンキーズを目標としている事、ブルーコメッツに師事された事、メンバーの紹介などです。売り出すために盛られた部分もありそうですが、ある程度は事実に沿って書かれてる様です。今ではあり得ないですが、メンバーの住所も普通に載ってます。

この時代は、実際にバンドが歌と演奏の両方を行っていても、演奏もしていることを示す記載がないレコードが多かったのですが、このレコードの歌詞カードや盤には「(歌と演奏)ザ・ガリバース」と記載されています。

 

[再発盤について]

このレコードは、「CULT GS 7inch Box Vol.1」というシングルレコード10枚入りのBoxセットの中の1枚として平成に再生産された物があります。この再発盤は割と再現度が高く、写真で見るとオリジナル盤と見間違えるような出来です。分かりやすい見分け方は、盤のラベルの右側に(17SUV-0004)と印刷されているかを確認する事で、印刷されている方が再発です。これよりも分かりやすい相違点は、スリーブのデザインが全く違うという点ですが、スリーブだけ当時物に差し替えられた再発盤を販売する人もいるので注意が必要です。

 

[曲について]

A面:赤毛のメリー

ワウペダルをリズミカルに使ったイントロから始まる。単純で技巧の凝らしたものではないものの、格好良くインパクトがあって良いです。歌のメロディーはキャッチーで、それに独特な世界観の歌詞が乗せられています。一応失恋ソングなのでしょうか。

サビへの繋ぎの部分が雑で、急に別の曲になったような感じがありますが、それもこの曲の個性となり魅力になっています。曲としてのまとまりがあるとは言い難いく現代の感覚で聴くと荒い仕上がりですが、勢いと演奏の安定感があるので退屈する事なく楽しく聴けると思います。

 

B面:ダークの瞳

テンポの良いカッティングと跳ねるようなベースにより,明るく軽快な曲に仕上がっている.と思ったらサビでいきなり曲調を変え、メロディアスな感じに変わる。軽快なだけの曲だとさらっと聴き流してしまうので、こういった変化があると印象に残りやすいです。A面に比べると転調までの流れが自然で、全体としてまとまりがあるように思います。

両面ともストリングスなどは無く、バンドのみのサウンドとなっています。音楽性に他のGSのシングルと大きな違いがあるわけではないですが、サウンドガリバース特有の物があります。

 

 

 

カバー版探訪② シルバー仮面

 

我が家には、東芝レコード、ビクターレコ-ド、コロムビアレコードから発売されたレコードがあり、それぞれ別の音源となっている。

 

東芝版〉歌:ハニー・ナイツ 柴俊夫(故郷は地球 のみ)

【故郷は地球】

テレビのオープニングに「主題歌 東芝レコード」の表記がある通りこれがオリジナル版だ。ただ、オープニングに使われている物がこの音源を編集したものではなく、別音源なので、イントロなど明らかにテレビと違う箇所もある。

 

【戦え!シルバー仮面

 

 

〈ビクター盤〉歌:ヤングフレッシュ・ザ・ブレッスン・フォー残念…ジャケットが無い

【故郷は地球】

「淋しい時には~弟よ」はブレッスンフォーのみで、他は両方のグループが歌っている。両方で歌っている部分はヤングフレッシュがメインという感じである。

B面よりヤングフレッシュのノリが暗い感じなのは、原曲のキーに近づけようとしたためだろうか。

 

【戦え!シルバー仮面

こちらはブレッスンフォーのみで歌うパートが無く、ヤングフレッシュがメイン。ブレッスンフォーはバックコーラスのみを担当している。ただ、アウトロの「アーアーアー」というコーラスはブレッスンフォーのみ。

子供らしい元気な感じを表したかったのか、「無法星人やっつけろ」の「ろ」を高く伸ばす様にアレンジしたり、「それ!」という部分を強調したりしている。

 

子供向け番組だから子供が歌いやすいようにしようという考えがあったのではないかと思います。両曲ともテンポがやや遅いのもそのためか。

 

 

コロムビア盤〉歌:ボーカル・ショップ

【故郷は地球】

タンバリンの音が東芝より目立ち、ややリズミカルになっている。切れのある演奏とコーラスが素晴らしい。音に厚みがあって迫力があります。

 

【戦え!シルバー仮面

「ジャンプ!キック!パンチ!」の箇所が段階的に音程が高くなっていくというアレンジがされている。このアレンジが結構カッコ良く、アレンジした人のセンスの良さが感じられる。ギターのカッティングの音が綺麗で聴き心地が良い。

東芝とビクターの両方にあったアウトロの「アーアーアー」というコーラスがないです。意図があったのか、単に入れ忘れたのか分かりませんが、これが無くても違和感は無いです。

 

両面ともキーが東芝版より高く、それにより明るい感じに聴こえます。

他の会社のレコードでも同じ音源が使われてます。おそらくコロムビアで製作された音源かと思いますが違うかもしれないです。

 

 

 

私は未所持ですが、他の会社からもリリースされました。現物を持っていないため実際に音源を聴けず、詳しくは書けませんが…

朝日ソノラマ・・・

 ソノシートで有名な朝日ソノラマですが、この頃はソノシートより少し厚い「パンチシート」と通常の厚さのレコードをメインにリリースしていました。

 「パンチシート」では、東芝と同じ歌手で、東芝と同音源かと思います。しかし、通常のレコード盤はなぜかボーカルショップ版(コロムビアと同じ)です。何か契約上の都合でもあったのでしょうか。

 

テイチクユニオン・・・

 グリーン・ブライトによるカバー版シングルが出ています。

 

サンレコード・・・

 ピクチャーレーベル仕様のドラマ入りEPがあります。ジャケットも盤もかなり気合の入ってる様なデザインが魅力的です。コロムビアと同じボーカルショップです。

 

東宝レコード・・・

 片面が「ミラーマン」、その裏に「故郷は地球」が入った2曲入りシングルが出ています。地域によっては裏番組のミラーマンカップリングだなんて… (こういうのがこの頃はよくありますね。)これもボーカルショップ版です。東芝以外のレコード会社はボーカルショップ版が多いです。

 

 

他に、武田薬品が番宣用に流通させたシングルレコードがあります。SIDE1は、東芝と同じ柴俊夫&ハニー・ナイツ版の「故郷は地球」。SIDE2 はシルバー仮面に出演していた松尾ジーナさんの「私、ハイシーAと申します」。これはCMソングですね。

故郷は地球は東芝と同じ音源、松尾ジーナさんは当時東芝レコード所属の歌手でもあったことから、このレコードは、東芝レコードが作ったものと思われます。中古で流通している物のスリーブが東芝の普通のスリーブである事からもこの推測は正しいかと思います。

 

 

 

 

GSの7インチコンピ盤について

FS-3014 「モナリザの微笑み グループ・サウンズ・ベスト・ヒット」

 A面 1.モナリザの微笑み(ザ・カーナビーツ

      2.青空のある限り(ザ・カーナビーツ

 B面 1.北国の二人(ザ・ジャガーズ

     2.バラ色の雲(ザ・サベージ)

 このコンピ盤の特徴は、フィリップス以外のレコード会社のGSのヒット曲をフィリップスの所属GSがカバーした曲により構成されているという点です。タイガース、ワイルドワンズブルーコメッツヴィレッジ・シンガーズのヒット曲を3組のGSが分担してカバーしています。

特に印象的な曲は「青空のある限り」で、原曲ほど洗練されてはいませんが、荒く激しい演奏と臼井啓吉氏のクールな歌声が良く合わさっていて魅力的です。「花の首飾り」は、アイ高野氏の高く美しい歌声が堪能できます。カーナビーツは実力の高いバンドだったんだなあと再認識させられました。ぶっきらぼうな「バラ色の雲」や、意外と違和感のない「北国の二人」は、やや印象が薄いです。

 

SS-244「テレビ主題歌集」

 A面 1.でっかい青春(布施明

      2.愛の子守唄(竜雷太

 B面 1.太陽野郎(寺内タケシとバニーズ

     2.ワイオミングの兄弟(シャープ・ホークス)

 このコンピ盤は、大手レコード会社にはよくある普通のテレビ主題歌集です。シングルヒット曲の「太陽野郎」とLP収録曲の「ワイオミングの兄弟」が入っています。音源的には特に珍しくもなく音質もやや悪いですが、破った写真を張り付けた感じのジャケットのデザインは魅力があると思います。

 

NDS 46「SANYO SOLID STATE STEREO」

 ステレオに付いてくる試聴盤で、GSと無関係っぽいジャケットですが、ザ・フィンガーズの「ウィンディ」が聴けます。

ジャケット裏のグループ名の表記を見ると「フィンガース」だったり「フィンガーズ」だったりで、どっちだよと突っ込みたくなります。

多分、フィンガーズのレコードで最も安く買えるので(100円から50円くらい)、GSレコード収集の入門には丁度良いと思います。

ザ・ジャングメン "風鈴峡" レビュー

1. 「春風のハイキング」

 ス:昭和のファミリー向けアニメのような明るいのんきな雰囲気がある短い曲だ。しかし、段々とリズムがぎこちなくなっていく電子ピアノ、まるで一人だけ洞窟の中にいるかのようなリバーブのかかったドラム、そして投げやりな音のベースは不穏さを感じさせるものになっている。アルバムの最初からすべての期待と予想を裏切るような音楽であることをかなり評価したくなる音楽であった。

 

2. 「自転車遊園」

 ス:壊れかけた車のエンジンたちのオーケストラのような音だ。しかしただのノイズにはとどまらず、リズムやメロディーを少しだけ感じさせるものになっており、ポップと前衛芸術の間の不気味の谷に位置するような曲だ。途中から謎のベースが入ってくるのも、いきなり高音が出てくるのもタイミングが素晴らしいし、ドラムも小さすぎると思わせておきながら実際は曲の基盤を強固にしている。このアルバムの最初の名曲である。

 

3. 「煌びやかな休憩」

 ス:耳鳴りのような高音のシンセからいきなりとんでもない低音が襲ってくる。その後いきなり普通っぽい音になったり、明らかにリバーブのかかりすぎなドラムが入ってきたり、リズムの合っていないシンセがきたりと、ここまで忙しい曲があっただろうか。シンセメロディはぎこちなく腑抜けで、他の要素と絡み合い高熱時の不安感のようなものを誘発する。最後は無音というのもなかなか乙だ。

 

4. 「階段」

 ス:素晴らしい低音の上に、階段を無気力に転がり落ちる小さい無数のビー玉のような、そんな音が続く不気味な曲だ。こんな階段は近づきたくない。太鼓のような音も、壊れた空襲警報のようなシンセも、不気味さを引き立てている。子どもに聴かせれば、夜寝れなくなるだろう。

 

5. 「雑誌を入手」

 ス:もう意味不明だ。壊れた医療器具みたいな高音を出すシンセ、申し訳程度のベース、井戸の奥底に沈んだかのように距離のあるストリングスはバランスもクソもない。しかし曲全体としては同じ要素だけなのにきっちりとした進展があり、飽きのないおもしろい曲になっている。他の曲に比べても聴きやすい印象があり、かなりいい曲だとここまでくると錯覚してしまいそうだ。

 

6. 「冴えない私」

 ス:なるほど確かに冴えない音だ。今までの電子的な音と違い生の楽器を使用しているが、耳に入るのはかろうじて音楽と認識できるような音の集合だ。ギターは戸惑ったようにおぼつかないし、ほうきのようなそんな音まで入っている。途中から入る謎の民族音楽的楽器も、音響デザインをすべて無視してホワイトノイズと共に急に現れたギターも、ここまでくると聴き手としては嬉しい唖然の状態になってしまう。よくわからないベースが曲を引っ張るのも、途中でベースと、おそらくもう一つのベースの呼応が楽しめるのもいい。最後に行くにつれ段々とテンポが速まり、緊張感が増すのも脱帽ものだ。名曲。そうとしか表現できない曲だ。

 

7. 「虹の汽車」
 ス:ポップな電子ドラムのリズムとイケイケな感じのシンセから始まり、やっとまともな曲が始まったと期待するがその期待はへなちょこでデカすぎるベースでぶち壊される。そのベースの裏でなるピコピコ音はキャッチーだが、妖怪のようなひょろひょろした音も同時になっているせいで不気味だ。冷戦時代のコンピュータが重大なバグを起こしているような音が鳴り終わるのはかなりセンスがいいし、それと共にファンシーな鉄琴のような音が入ってくるのもおもしろい。胃もたれしない程度のヘンテコさ、飽きないレベルの長さと構成、ザ・ジャングメンの長所が出ている曲である。

 

8. 「風鈴峡」
 ス:これもまた不気味だ。バレエ用の曲を電波ジャックを受けながら聴いている気分になる。肉を焼くような音、暴力的なスネアとストリングス、暴れ始めるピアノ、全部が恐ろしい情景を描きだしている。猟奇的という言葉がこれほどまで似合う音楽が、あっただろうか。

 

9. 「失われた消失」
 ス:海賊版スーファミソフトのBGMのようだ。ポップでキャッチーではあるのだが、どこかおぞましい違和感を感じてしまう。それは妙に主張の強いベースのせいかもしれないし、変に明るいメロディのせいかもしれない。しかし他の曲に比べて聴きやすくはあるのだが変化も少なく、よく言えば箸休めになる、悪く言えば箸にも棒にも掛からない曲である。これまでの流れから産まれた先入観を見事に裏切った曲、そう表現しておくのが最適だろうか。

 

10.「夕暮れ時」
 ス:作曲者が今まで経験した夕暮れ時はどんなものだったのだろうかと訊きたくなる曲だ。困惑したような電子ピアノの音と謎の物音、絶望したような音のストリングス、そしてそれを包み込む低音、いいちこのCMの哀しさと怖さをそれぞれ2乗したような雰囲気がある。段々音が大人しくなったり、けれどもまた存在感を見せたりという構成は、陽が沈みそうで、けれどもまだ薄明るいような、そんなぼやっとした夕暮れ時のイメージを感じさせる。美しい曲であると言っても問題はない。

 

11.「夜の渚」
 ス:踏切のように延々と繰り返すメロディに、獣の遠吠え、もしくは改造車の排気音のような音が、とても遠くから聞こえてくるみたいに籠った音で重なっている。考えれば意味不明なのだが、どこか直観的に懐かしい感じがする音楽だ。もうかすかにしか思い出せない記憶を、再投影させるような独特な雰囲気を持っていてとてもいい。素晴らしい曲だ。

 

12.「高飛車」

 ス:最後を飾るのにふさわしい曲だ。アルバム前半の過激さをほんの少しだけ残しながらも、後半のアンビエント的な路線を貫いている。ザ・ジャングメンの集大成と言える曲だろう。この曲は輪郭が曖昧でぼやけた情景を思い出させる。宮沢賢治の詩集に「心象スケッチ」というものがあったが、それこそこの曲にふさわしい言葉だ。ふわふわとふらつく掴みどころのない何かを、音楽に落とし込んだのだ。なんと美しい曲なのであろう。

 

総評

 ス:アルバム全体として聴くのは疲れるし、音は耳にとって辛いものも多く、連続では3曲聴いただけでギブアップしてしまうようなアルバムだった。けれども、そのへなちょこでアホな音たちの下にはポップなメロディや美しい音風景が隠れている。全体を通して音作りや音のバランスは統一感があったし、曲の中でもアルバム全体でもペースがよく、長すぎて飽きるといったことはなかった。ザ・ジャングメンは音楽でしか表現できない世界を見つけ、それをそのまま音楽として表現したように思う。そこにこのアルバムの魅力はある。他の音楽にはない、特別な魅力が。