ラ・シャロレーズ ”うわさの二人”

品番:PS-3050

発売:1969年?月?日

 

ラ・シャロレーズは、北海道札幌市でメインに活動していたバンドで、このレコードは北海道内で1969年に販売されたらしいです。私の所有する盤も札幌のリサイクルショップでジャンクレコードの入ったエサ箱から見つけたものです。

(残念ながらジャケットは欠品)

当時の宣伝文句は、「彩木雅夫の異色作品 和製アートロック」。確かに、当時の他のGSや歌謡曲、ポップスと比べてみるとかなり異色な感じが有りますが、正直「アートロック」とは言えないような… 

A面の「うわさの二人」は、中尾ミエさんもシングル「忘れられた坊や」のB面曲として1969年8月にリリースしています。

 

【うわさの二人】作詞:有馬三恵子 作曲:彩木雅夫

丁度GSブーム時に日本で流行った ”fuzz” が効果的に使われています。ノイズの様な軽くチープな音が味があって良いです。

シンプルな曲かと思わせてから、間奏から独特な変化が起こる所にこの曲の魅力や面白さがあると思います。ワウペダルを使ったと思われるギターの独特な音色、大人しくなった所で急に大きな音を出す電子オルガン、力の入ったドラム。他のGSでは聴けない個性を持った演奏が聴いていて楽しいです。

リズムが強調された曲ですが、ノリが良いとは言い難い様な暗さを少し感じました。ビクターレコードから発売された中尾ミエ版の方がノリは良いと思います。

当時の録音事情を考えると仕方がない事ではありますが、音質がいまいちで、軽い音になってしまっているのがやや惜しい。ベースやドラムの低音がもっと耳に響いてくるような感じだったらもっと良くなるのにと思います。それでも、独特な格好良さは有るので、全てのGSのシングル曲の中でも特に好きな曲です。

 

【さよならしても】作詞:星あきら・北美穂 作曲:彩木雅夫 

こちらは異色な感じがあまり無く、GSの王道っぽさのある歌です。A面に比べると印象が薄いですが、A面よりもまとまりがあってメジャーレーベルのGSとあまり変わらない様な出来栄えだと思います。その分A面の様な奇抜さはないですが。

明るいとも暗いとも言えないノリで地味ですが、サビでは少し盛り上がります。長い間なり続ける電子オルガンの音色が綺麗で、間奏時ののなめらかなギターのサウンドが美しいです。

 

 

終わりに

この盤は自主制作らしいので音質はあまり良いとは言えませんが、オーケストラの入っていないバンドのみのサウンドを聴ける事に魅力があると思います。60年代の北海道のロックバンドはどんな感じの音を出していたんだろう?という疑問に応えてくれるという面の価値もあると思います。音源がYouTubeには無く、レコードは高価ですが、コンピ盤のCDにこの2曲の音源が収録されているので、それで聴くことができます。

 

 

カバー版探訪① 帰ってきたウルトラマン

今回は帰ってきたウルトラマンの主題歌、「帰ってきたウルトラマン」についてです。

 

帰ってきたウルトラマンの各種カバー版については Wikipedia 等で詳しく言及されているため、あまり深くは入らず、私の所有するレコード音源3種を聴いて思ったことなどを書こうと思います。

作中でウルトラマンに変身する 郷秀樹 役の団時郎(団次郎)さんがオリジナル版を歌っていますが、他にカバーバージョンが複数あり、○○版といって区別されています(三鷹版、山形版、外山版など)。

 

 

コロムビア】  歌:三鷹淳 コロムビアゆりかご会

このバージョンを初めて聞いたのは小学生の頃、骨董屋でもらった裸の状態のEP盤を聴いた時で、その当時は「オリジナル版に似てるけどなんか違うなぁ」と違和感を感じながらいつも聴いてました。演奏は団次郎版と同じで、歌手が違うバージョンだとは後から知りました。

70年代のコロムビアは、シングル盤は団次郎版(品番で言うとSCS-128やSCS-449)、他番組とのコンピレーション盤では、多くはこの三鷹版が使用されていたようです。

演奏はオリジナルの団次郎版と同じ音源を使用したようですが、歌手の声質が全く違うため、はっきり違いがわかります。

 

「帰ってきたぞ ウルトラマン」というサビの最後の部分は、「ン」を伸ばすようになっていますが、団次郎版は声がフェイドアウトのようになっていて、いつの間にか聴こえなくなる感じです。それに対し、三鷹版は声の途切れる部分がはっきり分かり、少し気になりました。団次郎さんがそういう歌い方だったのか、ミキサーが調整したのか分かりませんが、三鷹版も団次郎版と同じ様にした方が良かったのではと思いました。

また、団次郎版の歌声はややエコーがかかったような音質で、これにより詩の区切りの中間部分になめらかな感じがありますが、三鷹版にはそういった感じは無いです。

エコーっぽくなっていない三鷹版は歌声と演奏の音がはっきり分かれているように聴こえます。

単に声の高さで比べると、三鷹版の方が少し高いです。

 

  [レコード]

       

左はA面に「スペクトルマン」、右はB面に「旧1号偏の仮面ライダー」の主題歌が入った4曲入りのコンピ盤。2枚とも「テレビまんがヒットシリーズ」のレコードです。

 

 

【キング】    歌:ポニー・ジャックス ひばり児童合唱団

オリジナル版ではあまり目立たないベースが、キング版では大活躍していて、特に2回の間奏時のベースラインは見事です。シンプルにリズムを刻む感じから少し複雑なベースラインにアレンジされていて、これが本当に格好良いです。アレンジをした人のセンスを感じます。

演奏の重厚感や美しさについてはオリジナル版に劣りますが、サビの盛り上がり方や間奏においてはキング版の方が優位かと思います。

 

歌は、ソロ歌手+児童合唱団という構成でなく、コーラスグループ+児童合唱団となっています。これが団次郎版や三鷹版、外山版と大きく違う所で、コーラスグループ特有の歌声の厚みが感じられます。歌のメロディーはオリジナルに忠実で変なアレンジがないため、聴きなれるとあまり違和感はないです。

 

 [レコード]

      

左2枚は放送当時のコンピ盤EP(品番:CC(H)-1013)のジャケットの裏と表。

右は第3次怪獣ブーム時(1978年)に発売されたシングル(品番:TV(H)-45)のジャケット。

左のEPのジャケットにはなぜかNGスーツの帰りマンのスチールが使われている(セブンと決闘するイカルス星人の左隣)。

右のシングルは二つ折りのジャケットで、帰りマンの全身が写ったポスターのようになっている。当時、ウルトラマンウルトラマンレオも同じような二つ折りジャケットのシングルがそれぞれリリースされました。ウルトラQのみ正方形のジャケットで出ています。

 

 

朝日ソノラマ】 歌:外山浩爾 少年少女合唱団みずうみ

間奏のオリジナル再現度は、他のポニージャックス版よりも高いです。演奏は全体的にオリジナルに似せようとしたと感じられますが、イントロのベースなど変えられた部分もあります。正直このベースのアレンジは、あまり動きが無く昭和46年にしては古臭いという印象です。

ただ、全体を通してはオリジナルの美しさを上手く再現されており、聴いていて心地が良いです。歌声はオリジナルよりも低く大人っぽいです。オリジナルとは違った魅力があります。

 

[レコード]

            

私が持っている物は、「帰ってきたウルトラマン怪獣大図鑑」という今ではそこそこのプレミア価格がついた図鑑の付録のソノシートです。図鑑本体が無いのが惜しい…

朝日ソノラマの通常のレコード(品番ARM-4535)等でもこれと同じ音源が使われています。他にエルムからも同じ音源のレコードやフォノシートが出ています。ソノラマやエルムの物もよく売れていたため、当時このカバー版は多く流通していた様です。

カバーバージョンの宝庫!テレビマンガ大行進

ジャケットや歌詞カードにはレオやチョビンなどの写真が使われていますが、中身は殆んどオリジナル歌手の音源が無く、カバー版ばかり。当時これを買った子供はテレビと明らかに違う曲達にがっかりしたかもしれないですが、マニアにはちょっと珍しい音源が聴ける事が魅力的です。

全12曲の中から印象に残ったもの5曲について書きます。

 

ウルトラマンレオ】(子門真人 光の国児童合唱団) A面3曲目

いわずと知れた子門さんによるカバー版。カバー版である事を忘れるくらい違和感が無く格好良い歌声です。演奏は、楽器によってはアドリブっぽい所が有ってまとまりに欠けるような感じが多少ありますが、歌に注目して聴けばあまり気にならない。ただ、イントロが弱いです。

必要性を感じられないが、なぜかピアノがある。アドリブで弾いている感じだが、なんとなく手持ち無沙汰な感じがある。このアルバム全体に言えることではあるが、ドラムの音が軽いのが惜しい。

 

【戦え!ウルトラマン・レオ】(野村忠久 光の国合唱団) A面4曲目

オリジナル版よりも全体的にのどかで平和な感じがある。

イントロやAメロはいまいちな感じがあるが、Bメロの編曲はおしゃれで魅力がある。「ウルトラマン・レオ」では必要性の感じられなかったピアノもこの曲ではよく活かされている。

 

【ケンにいちゃん】(大和田りつこ) A面5曲目

このLPにあるカバー版の曲の中では、特にクオリティが高い作品。原曲に聴きなれていてもあまり違和感が無いと思う。弾むようなリズムが心地よく、メロディーも明るく懐かしい感じがあって良い曲です。

 

【戦え!イナズマン】(ロイヤルナイツ 光の国児童合唱団) A面6曲目

イントロなどにシャウトがあるのは原曲通りですが、弱弱しく、うーん…と思ってしまう。

ロイヤルナイツの歌声は良いですが、「うわぁ」というシャウトによって完成度をかなり下げているような気がします。演奏は、原曲に近づけようとした感じはあり、楽器の音も寄せようとした感じがします。

 

ゲッターロボ!】(野村忠久) B面6曲目

原曲の力強さがなくなっていて迫力が足りない感じがある。TV版を聴いた事がなく、譜面だけを見て演奏されたのではと思うくらいかけ離れた雰囲気になっています。ややテンポが遅いです。か弱いイントロや、少しぎこちないアウトロも気になってしまう。

これの後にコロムビアレコードの原曲を聴くと凄く激しく感じます。

 

他の曲・・・

A面1曲目 はじめ人間ギャートルズ(ザ・ギャートルズ

  2曲目 やつらの足音のバラード(ちのはじめ)

B面1曲目 新みなしごハッチ大和田りつこ

  2曲目 魔女っ子メグちゃん大和田りつこ

  3曲目 ピンポンパン体操‘74(CBSソニー児童合唱団)

  4曲目 げんこつ山のたぬきさん(CBSソニー児童合唱団)

  5曲目 星の子チョビン大和田りつこ CBSソニー児童合唱団)

 

終わりに・・・

おそらく時間や予算に制約があったと思うので、テレビのオリジナル版よりも出来が劣ってしまうのは仕方がないと思います。

ただ、「ウルトラマン・レオ」や「ケンにいちゃん」はTVで使われても問題ない様な出来で、このバージョン特有の魅力もあります。

ピンポンパン体操やげんこつ山のたぬきさん、星の子チョビンも普通に良い出来です。

パチソンと呼ばれてYouTubeなどで笑いものにされるような出来のカバー版は、このLPにはないので、そういうのを期待した人にはこのLPは物足りないかもしれないです。

 

 

 

ザ・バロネッツ ”サロマの秘密”

品番:SONA-15003

発売:1968年9月

レコード会社のCBSソニーの発足時に第1号アーティストとしてフォー・リーブスやアダムスと同時にデビューしたバンドがザ・バロネッツで、この「サロマの秘密」はバロネッツのデビュー曲です。

 

【サロマの秘密】

北国やユーカラといった北海道をイメージさせる言葉が散りばめられた歌詞で、曲名にある「サロマ」も北海道の地名です。

北海道のオホーツク海の傍に「サロマ湖」があり、その南西側に広がるのが「佐呂間町」。「サロマの秘密」の英語でのタイトルが「Misty Lake Saroma」となっている事から、この曲の舞台は佐呂間町というよりはサロマ湖周辺と捉えるべきかと思う。歌詞中のサンゴ岬は、サロマ湖にある岬です。

サロマ湖は、北海道外での知名度は分からないですが、道内では北海道最大の湖である事などから、観光名所としてよく知られています。

北海道の湖 数ある中でなぜサロマ湖が選ばれたのかが少し疑問に感じるますが、阿寒湖や支笏湖などよりも曲の雰囲気には合っている気がします。

 

日本国内が舞台になっていますが、現実的になり過ぎず異国情緒に近いものを感じられる歌詞が魅力的で、美しいメロディーも相まって品のある作品に仕上がっていると思います。コーラスも繊細で美しいです。

ただ、ミュートを使った奏法や曲調からパープル・シャドウズの影響を明らかに受けている感じがあります。

パープル・シャドウズが「小さなスナック」でデビューしたのが1968年3月25日で、ザ・バロネッツが「サロマの秘密」をリリースしたのは同年9月。「小さなスナック」に影響を受けた曲をリリースするには十分な期間がある事から、パープルシャドウズ人気にあやかろうとした事が考えられます。しかし、単純な真似ではなく、オリジナリティを感じさせる面もあり、特有の魅力があるとは思います。

このバンドはこの曲が最も有名なため、北海道のバンドだと言われることがありますが、実際の所は違うらしい。レコードジャケットにあるプロフィールによるとメンバーの出身地は千葉、東京、大阪、名古屋とあり、北海道出身者は一人もいないです。

 

 

【愛の女神】

ゆったりとしていて落ち着いた曲の多いバロネッツの曲の中では、ノリが良く、音量を上げて聴けばそれなりに盛り上がる曲だと思う。「命をささげてもいい」という部分は泣きながら歌っているような感じで、アイドル系GSによくある様な感情的な感じの曲となっている。盛り上がったり落ち着いたりする曲ですが、演奏はメリハリがあり安定感があります。両面ともスタジオミュージシャンっぽい感じはしますが、もしバンド自身の演奏なら上手いバンドだと言えると思う。メンバーによる声質の違いがはっきり分かります。

 

【終わりに】

A面はパープル・シャドウズにアイドル的要素を付加した路線で、デビュー盤のA面には地味な気もしますが、コーラスも演奏も繊細な美しさが感じられます。

B面はGSの王道を行くような系統でストリングスの使い方や歌詞の世界観がGSらしいです。

ロネッツのリリースした5曲は、どれもGSのガレージロックやR&Bという側面を好む人には合わないかもしれないですが、安定したクオリティを保っていて、どれか1曲を好きになったら他の曲も好きになるはず。

CBSソニーでは、他にアダムス、アルファードヴィレッジ・シンガーズ、ブルーシャルムといったGSがレコードを出しています。大ヒット曲と言える物はあまり無いですが、眠れる乙女やハイウェーラブといった名曲が幾つもあります。

 

アルバム一言レビュー1月号

色々忙しくてちゃんとした記事が書けないという言い訳の下、最近聴いたアルバムを一言くらいでレビューする記事です。点数はつかないですし、もしかすると今後ちゃんとレビューすることがあるアルバムも入っているかもしれないですが、まあどうにかしてけろ。

 

MUNA "MUNA"

おしゃれでキャッチーでいい感じのインディーポップロックだったしまた聴きたいと思えるものだったけどちょっとインパクトに欠けたかなあ。いいアルバムだったけど最高とは言えないね。

 

ED REC "Ed Rec Vol.2"

うーん聴く価値あったのはイントロとDJ Flashのやつくらいだったかなあ。いい感じのやつもあったから何度かまた聴いてみるけどはっきり言えば少しガッカリだったね。

 

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン "レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン"

思ったよりずっと良かったなあ。色々おもしろいアイデアや音があったし何よりかっこよかったね。かなり気に入ったよ。

 

BROCKHAMPTON "TM"

大体は悪くはないんだけどサビが全体的に弱いのが最大の弱点だね。"KEEP IT SOUTHERN"とか"NEW SHOES"あたりはよかったかな。あとミックスはすごい変だったね。好きだけど。

 

ガービッジ "G"

いやあかっこええな?!すごい気に入りました。多分レビューするってなったら高得点だろうなあ。

 

ブラック・サバス "Never Say Die!"

悪くはないけど良くもないしサバスっぽさがまったくなくて印象にも残らなかったなあ。正直一番ダメなタイプのアルバムだったね。

 

Grace Jones "Slave to the Rhythm"

ポップだけどヘンテコでハードだけど優しいサウンドのおもしろいアルバムだったなあ。やっぱGrace Jonesはすげえな・・・。特に最後の2曲が最高でしたね。

 

アイアン・メイデン "魔力の刻印"

うお~かっけえ!!すごいハードなロックなんですけど単調にならないのがよかったね。キャッチーだし聴いてて楽しいし最高だったなあ。


 

他にも色々聴いているんですがまた今度って感じで。

アウト・キャスト ”愛なき夜明け” レビュー

品番:SN-608

発売:1968年1月10日

   

このレコードは、アウト・キャストの5枚目で、1968年3月の解散前最後のシングル。解散後すぐに1名を除き別のメンバーで再結成され、1枚シングルをリリースしている。シングルリリースの順番は以下の通りとなっている。

 

1.友達になろう/気ままなシェリー         発売:1967年1月25日

2.愛することは誰でもできる/電話でいいから    発売:1967年4月

3.レッツ・ゴー・オン・ザ・ビーチ/エンピツが一本 発売:1967年7月10日

4.一日だけの恋/僕のそばから           発売:1967年10月15日

5.愛なき夜明け/ふたりの秘密           発売:1968年1月10日

6.空に書いたラブレター/君を慕いて        発売:1968年6月5日

 

4枚目のシングルまで在籍していた穂口雄右氏が津々美洋とオール・スターズ・ワゴンに加入するために脱退したため、5枚目の「愛なき夜明け」では、4人組になっている。

 

【愛なき夜明け(作詞:橋本淳 作曲:筒美京平)】

メンバー自作曲と洋楽カヴァーが多いアウト・キャストのレコード曲の中では、数少ない外部の作家に依頼した作品。メンバーの意志ではなく、事務所かレコード会社の方針で依頼することになったらしい。

テイチク・レコーディング・オーケストラの演奏が目立ち、バンドのみで演奏している「一日だけの恋」等とはかなり異なった印象を受ける。間奏以外ではギターの音もあまり目立たない。ただ、タンバリンやドラム、ギターの音を意識して聴くとアウト・キャストらしさを感じられる。この曲にタンバリンはいらない気もするが、リズムの強調には役立っている。歌は感情的で、泣きながら歌っているような感じだ。

GSの王道に近いような曲調のバラードで、真っ向からヒットを狙っているような感じがする。作曲者が同じで時期も近いためか、サビが若干ザ・ワンダースの「赤い花びら」(1968年3月発売)に似ている感じがする。

正直、他のアウト・キャストの楽曲を聴いた時の様な新鮮味や衝撃はあまり感じられなかったが、壮大な雰囲気のイントロや曲調に魅力を感じた。

当時、テレビではミリタリールックでこの曲を演奏していたらしく、多分映像は現存していないが見てみたい。

何故か1968年にテイチクから発売されたEPの中に、この曲をボサノヴァにアレンジしたカヴァー版がある。

 

【ふたりの秘密(作詞:大野良二 作曲:大野良二)】

こちらは、A面と違ってバンドのみの演奏と思われる。(レコードもA面にあった「テイチク・レコーディング・オーケストラ」の表記が無い)

1967年11月発売のLP「君も僕も友達になろう」にも収録されている曲ですが、LPとは別音源です。アレンジが変わっていて、LP版に比べテンポは遅くなっていたり、弾き方(叩き方)が違っていたりと聴き比べるのも面白い。大まかに区別するとシングル版は静かでLP版はシングルよりやや激しめという印象で、昼聴くならLP版、夜中に聴くならシングル版という感じがする。

LP版よりも落ち着いた仕上がりで、良い感じのムードが出ている。お洒落でバンドのセンスの良さが感じられる作品だ。

 

【終わりに】

30年以上前はこのレコードも良い値段が付いていたらしいですが、現在の並品の価値は約1000円で、運が良ければ500円程で買えるので、手が出しやすいです。ジャケットの写真を囲む枠組みやタイトルの書体がいかにも60年代後半といった感じなので、ジャケをレトロなインテリアとして飾るのも良いかもしれません。

 

 

ファンキー・プリンス ”おやすみ大阪” レビュー

品番:SV-843

発売:1969年5月

ファンキー・プリンスは、1968年3月というGSブームの絶頂期に結成されたバンドで、「ナンバ一番」に出演し人気となり、69年5月にこの「おやすみ大阪」でデビューしました。

この「ナンバ一番」というのは、当時大阪で最も力のあった音楽喫茶で、ザ・ファニーズ(後のザ・タイガース)やザ・タックスマンなどが上京しレコードデビューする前にレギュラー出演していた。オーディションに受かった地元のバンドや歌手の他に、東京などから来た有名な歌手やバンド(ザ・ゴールデン・カップスやザ・フェニックスなど)も出演している。昭和44年9月に閉店し、建物は他の店舗として使われた時期もあったようですが、20年以上前に解体され現存していない。

レコードリリース後は、大阪のナンバ一番やミュージックプラザ、東京の新宿アポロなどに出演していた。レコードは1969年リリースの2枚のみですが、1968年から1971年まで3年ほど活動していたらしい。

日本ビクター株式会社は、1967年10月に「VP」というGSがメインのポップスの規格を新たに作ったのにも関わらず、このバンドのレコードは従来からある歌謡曲がメインの「SV」になっている。「VP」のダイナマイツやオックス、4.9.A、モップスなどとファンキー・プリンスをあえて分けた事から、ビクター側に最初から歌謡曲路線で売り出そうという考えがあったと考えられる。

このバンドは2枚のシングルは、いずれも歌謡曲系の曲です。

 

【おやすみ大阪(作詞:山上路夫 作曲:大野正雄 編曲:近藤進)】

ファズをメインに使っているものの、ザ・モップスの「ベラよ急げ」の様な荒々しさとは対照的な丁寧な演奏になっている。歪ませたりしているが、美しさが感じられる音に仕上がっている。

大阪が舞台なだけあって、途中歌詞に関西弁が使われている。「いややわー」などと絶叫する部分がとても印象的でそこだけ聴くとふざけたコミックソングかと思うが、他は真面目に作られている。演奏も歌もメリハリがしっかりしていて、盛り上げ方が上手い。絶妙に表現力の高いコーラスワークから、ナンバ一番で人気面でのトップになっただけの実力が感じられる。

 

【港で二人は(作詞:山上路夫 作曲:大野正雄 編曲:近藤進)】

A面と変わってこちらは夜の神戸が歌詞の舞台になっている。カクテルが登場したりとA面よりも大人っぽい世界観の恋愛ソング。

演奏や曲調はA面よりもGS色が薄く、歌謡曲色が強い。メロディーの美しさを重視したような仕上がりだと感じる。A面の様なインパクトはなく、あまり新鮮味は感じられないが、歌謡曲の様式美的なものが感じられる。特にストリングスのサウンドは聴いていて気持ちが良い。落ち着いた曲で、夜に一人で落ち着いて聴きたい様な曲だ。

 

【終わりに】

GSブームの末期に発売されただけあって、66年から68年までのGSの楽曲にはなかったような独特さが感じられる2曲です。ロックやR&Bの要素は極めて薄いですが、歌の感情表現が上手く、歌謡曲としての魅力はかなりあると思います。また、当時の大阪や神戸のイメージもなんとなく感じられるような点も良いです。関西では小ヒットしたらしく、価値はあまり高くないので(3000円程度)、気になったら買ってみるのも良いかもしれません。