The Avalanches "Since I Left You" レビュー

 オーストラリアのバンドThe Avalanchesのデビューアルバム”Since I Left You”はいい意味でデビューアルバムらしさがない。しかし溢れんばかりの創造性や瑞々しさ、エネルギーは若さを感じさせるものだ。

 

 サンプリング中心のアルバムとして有名であるが、DJ ShadowJ Dillaのような同様のクレイト・ディガーたちと違うと感じさせるものはサンプリング中心と感じさせない点であろう。楽曲”Since I Left You"や"Etoh"はすべてがまるで最初からそうだったかのようにしっかりと構成されているし、コメディチックな"Frontier Psychiatrist"では大量に散りばめられたサンプルたちが正確にかつ滑らかにつなげられている。

 

 ジャンルに捉われない姿勢もユニークだ。多様なサンプルたちに彩られたこのアルバムにはハウスやラップからクラシック、ラテンまでが混ざり合い、このアルバムでしか味わえないようなエキゾチックな体験ができる。最初のクラシカルなギターから”Flight Tonight”の訛ったラップ、”Frontier Psychiatrist”の西部劇チックな音たちに”Live At  Dominoes”のフレンチタッチなどなど、世界各地の音の織り交ぜられたエキゾチックなアルバムだ。

 

 曲の構成自体もかなり素晴らしい。ただのループにとどまらずに新しいパートの追加やビートスイッチ("Extra Kings"のものは格別である)などによって世界を拡げていくし、シングルカットされた曲ではポップソングのようにサビまである。聴いてて飽きることはないだろう。

 

 アルバムとしての構成も最高だ。すべての曲が次から次へとつながっていくのはスムーズであるし、”Tonight May Have To Last Me All My Life”のような淡く美しい曲が際立つのにもつながっているように思う。明るい曲ばかりではなく”Tonight ~"や”Pablo’s Cruise"のような静かでちょっぴりメロウな瞬間があることと、曲間の無さはこのアルバムの体験を映画のように壮大なまとまったものにしている。このアルバムで私が一番好きな点はアルバムの最初の曲が"Since I Left You"であり、最後の楽曲”Extra Kings”で”Since the day I left you"という声でクライマックスの美しいストリングスセクションに行くという点だ。映画ならこれはアカデミー賞総なめレベルだろう。

 

 このアルバムは時代やジャンルに縛られない自由なアルバムであり、アルバムとして通しで聴く体験はトップクラスのものである。けれども曲一つ一つもすべて名曲であると言えるし構成やミックスすべて素晴らしい。このアルバムは音楽が好きだという人であれば必ず聴くべきだ。10/10、10点中10点満点のアルバムである。