Coven "Witchcraft Destroys Minds & Reaps Souls" レビュー

 オカルトロックの先駆者的存在であるこのアルバムは、悪魔崇拝のテーマとキャッチーな曲作りが融合した、60年代ロックの隠れた名盤である。

 

 このアルバムには、暗くオカルティックな雰囲気が立ち込めている。それは"Black Sabbath"や"Choke, Thirst, Die"、"Pact With Lucifer"といった曲のタイトルから、"Coven in Charing Cross"におけるメンバーによるミサのような声からわかるだろう。アルバム最後の曲"The Satanic Mass"は13分にもわたる悪魔崇拝の儀式の録音であり、アルバム全体の雰囲気を確固なものにし、引き締めている。

 

 それは音楽の面でも同様である。力強いドラムやギターの音、魂をひり出すような声のボーカルは、現代のメタルにも通づるところがある。同時代のThe DoorsやJefferson Airplaneのような、不穏さで黒く彩られた音楽はかなり質の高いものだ。一曲でも聴けば彼らの能力の高さがすぐに理解できるはずである。

 

 けれどもこのアルバムの強みはその暗さを保ちながらも、キャッチーで聴きやすいものになっていることだ。"White Witch of Rosehall"や"Wicked Woman"はとても耳に残りやすいロックソングだし、他の曲もキャッチーなメロディや気持ちのいいボーカル、そして60年代でもトップクラスのギターソロが聴ける。メタル音楽に付きまといがちな聴きにくさはなく、サイケ色とブルース色の混じったようなたまらないロックである。

 

 普段ならここで問題点を言いまくるのだが、このアルバムに関してはほとんど見つからなかった。"White Witch of Rosehall"で右に聴こえてくるパーカッションと"Coven in Charing Cross"のミサパートが少しいらないと思ったことと、"The Satanic Mass"が長すぎると思ったくらいであるが、その問題点も世界観を増強するためのものに思えて少し許せてしまう。

 

 このアルバムは60年代後半らしい音を存分に響かせるアルバムであるし、悪魔崇拝などのテーマも、このような音楽にとてもマッチし、また世界観を広げる役割を持っていると思う。もっと評価されてもおかしくないアルバムであると思ったし、正直もっと評価されるべきだ。Black Sabbathのデビュー以前という歴史背景を考慮してもしなくても、高い評価であることに変わりはないだろう。ぜひ聴いてみてほしい。8/10だ。

 

スコット執筆