タイアップラップソングの世界:NFS U2とGT7の場合

 80年代にメインストリームになり現在まで人気が右肩上がりのものと言えば、ビデオゲームとラップだろう。その2つが交錯した瞬間も、たくさん見てきたはずだ。アメリカの大手ラップレーベルDef Jamが、これまた大手のゲームパブリッシャーのEAとコラボしつくられたDef Jam Vandettaとその続編たち。2000年代最大のラッパーの一人50 CentTHQがコラボした"50 Cent: Blood on the Sand"などのことである。もちろんその開発に関して大量のホラーストーリーがつきまとっているのも、ご存じだろう。今回はゲームとのタイアップで作られたラップソングの中でも、レースゲームに関する2つを見ていく。

 

ニード・フォー・スピード アンダーグラウンド2の、ドアーズの"嵐をこえて"にカリフォルニアのラッパーであるスヌープ・ドッグが参加したリミックスバージョンはかなり有名だろう。

 この曲はかなりつっこみどころがある。まずなぜドアーズとスヌープ・ドッグを混ぜ合わせたのだろうか。もちろんスムースでムーディーな曲調はマッチしているにはいるのだが、スヌープ・ドッグの売りはマリファナをやりまくっていることで、なぜ麻薬で人生が蝕まれたジム・モリソンのいるドアーズと合わせたのだろうか。別にそこはどうでもいいのだが、かなり金をかけたはずなのにCMにちゃんと使われていないし(探した感じだと一つしか存在しないしジム・モリソンもスヌープ・ドッグの声も使われていない)、正式名称も曲、シングル共に"Riders on the Storm (Fredwreck Remix)"で、知らない第三者が出てきてしまっている。

 この曲で一番嫌なところは、シングルのジャケットだ。ジャケットにはSnoop Dogg Featuring The Doors "Riders on the Storm"と書かれていてタイトルとマッチしておらず統一感がゼロだ。デザインもマイクロソフトペイントのデフォルトフォントのような文字で全くセンスがない。スヌープ・ドッグのロゴだけスプレーペイントっぽくなっており歩道橋の下に落書きする人がこのジャケットにも落書きした雰囲気がある。もうめちゃくちゃだ。売った人たちもマリファナを吸いまくっていたのだろう。あとドアーズの曲に後からスヌープ・ドッグを追加したならThe Doors Featuring Snoop Doggじゃねえの??

 

 もう一つあるのが、グランツーリスモ7の"Vroom"である。

 CMなどに使われているわけではないみたいだが、近年でまあまあデカめのタイアップソングだろう。キャッチーで悪くはないラップソングだが、アーティスト名が長すぎる。The FaNaTiX (feat. Idris Elba, Lil Tjay, Davido, Koffee & Moelogo)がアーティスト名の正式名称で、66文字である。世界一長い駅名(観光客呼び込む目的の駅名なので正直詐欺みたいなものなのだが)はllanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogochで58文字なので、これよりも短い。

 あと、SONYかゲーム会社のポリフォニー・デジタルは歌詞をチェックしておくべきだったのではないか。マスタングやブガッティなど車系の固有名詞が多く楽しい感じの歌詞だが、まずサビの歌詞の最初が"I might pull up in the Maserati, Maserati/Maybe the Bugatti, Bugatti/Hmm, Ducati, Ducati"なのだが、どこがおかしいか分かるだろうか。そうDucatiはバイクメーカーである。とんでもなく優しく見れば、グランツーリスモのバイク版スピンオフであるツーリスト・トロフィーには出ているのだが、GT7には出ていない。他には今までグランツーリスモシリーズに全く出たことのない車たち(マイバッハやGワゴン、BMW X5)も出てきて、なんだかなあという感じである。あと、2人のラッパーが同じ車を歌詞に使っているのも、ちょっと微妙な雰囲気を強くしている。ラッパーたちもお互いの歌詞を確認しなかったのだろうか。不仲で、他の人のパートを聴くのも嫌だったのかもしれない。

 

 別にどちらも曲自体は悪くないのだが、正直ネタにしやすい点が多すぎるのだ。もし次回があるとすれば、もっと笑えてしまうものを見ていこうと思う。Run-D.M.Cのパクリが聴けるはずだ。