The Cult "Love" レビュー

The Cult - Love Artwork (1 of 4) | Last.fm

 このアルバムはダークでムーディな音と力強いサビを兼ね備えた、完璧とは言えなくとも素晴らしいロックアルバムである。

 

 このアルバムの長所はその音だろう。80年代らしいビックなドラムと、クリーンでこれまたビッグなギター、そしてその中でも存在感を保つベースはかなり上質なものだ。それらの音が重なり合い、とても鮮やかでありながらうるさくは感じない、バランスのとれたサウンドスケープを作り出している。アップテンポな曲が中心でありながらも、それらの楽器陣によって少し不穏な雰囲気を感じさせるものになっておりとてもよい。"Big Neon Glitter"や"Phoenix"などはすべての楽器がかなり輝いているトラックである。

 

 特にギターは素晴らしかった。アルバム全体の原動力となっているし、ムード形成の中心ともなっている。演奏はとてもかっこよく、かと言って腕をひけらかすようなプレイでもない、とても統制され美しいものであると思った。"Brother Wolf; Sister Moon"のソロや"She Sells Sanctuary"、"Black Angel"全体など、ハイライトは山ほどある。

 

 ボーカルもかなり力強く好きであった。楽曲の中心にあり楽器たちよりも目立つ位置にいるのだが、少し歌詞の聴き取りづらい歌い方でまるで楽器の一つのように音楽自体に深みを持たせているのはとてもおもしろいと思った。"Nirvana"や"Rain"でのボーカルは剃刀の刃のように鋭いもので、素晴らしくかっこいい。

 

 またアルバムの構成もとてもよかったと思う。全体としてはバラエティに富んでいながら、しっかりとした統一感があったことはよかったし、アルバムクローザーの"Black Angel"はとても美しく、壮大で力強い曲で、このアルバムの最後を飾るのにふさわしい曲であったと思う。

 

 サビは全曲とても強いものであり、キャッチーで楽しみやすい。アルバム全体を見ても捨て曲は無いに等しく、今の時代でも十分通用するようなものばかりだ。けれども問題点もある。正直一曲一曲が少し長く感じたし、スネアの音はずっと聴いているとちょっとだけ耳が痛くなるものだった。そして、これはVan Halenの"1984"のレビューでも同じような文句を言ったのだが、いくつかの曲が強すぎる。ほとんどの曲が少し記憶に残りづらいのに対し、"Nirvana"、"Rain"、"Revolution"あたりが自分にとっては強すぎたし、特に"Rain"はあまりにもいい曲で、他の曲のよさが半自動的にかすんでしまった。

 

 あと細かいところだと、"Hollow Man"でシンバルが一瞬変な音になったのが気になったくらいで、全体的にはいいアルバムだと思った。正直何度も聴き返してもいいと思えるアルバムで、かなり気に入った。アルバム全部を聴くのが少し疲れることくらいが難点である。8/10だ。"Rain"だけでも聴いてみてほしいし、もし気に入ったのであればアルバム全部を聴くことをおすすめする。

 

スコット執筆