Bloc Party "A Weekend in the City" レビュー

 A Weekend In The City - Album by Bloc Party | Spotify  このアルバムは陰鬱なロマンチシズムを、インディロック的でありながら大人らしい繊細さを持つ音で描いた素晴らしいアルバムだ。

 

 このアルバムの根底にある音は、まぎれもなくインディロックだ。"Song For Clay (Dissapear Here)"や"Hunting For Witches"での粗削りなギター、"Sunday"などでの直線的なベース、"The Prayer"や"Where Is Home?"のダンサブルなドラムはFranz FerdinandKlaxonsTwo Door Cinema Clubなどの当時NMEを中心に注目を集めていたバンドに近い。それらのサウンドはすべてバランスが取れていて、とても美しく組み立てられている。

 

 けれども全体は、ロックなどの枠組みに捉われないとても繊細で大人っぽいサウンドである。"I Still Remember"でのグロッケンシュピールのような音や、"Waiting For The 7:18"、"On"などでのストリングスは曲によく深みを持たせている。特に"Waiting For The 7:18"のピチカートはとても素晴らしい。また"Uniform"、"Kreuzberg"、"SRXT"など、エレクトロにインスパイアされた音もとても趣深いものになっている。全体的な雰囲気づくりは最高だ。シンセやギター、ボーカルまでもがどこか冷たく無機質な、けれども人間味を感じさせるアンビエンスを作り出している。

 

 その冷たさは歌詞やテーマにも表れている。テロと人種差別をテーマにした"Hunting For Witches"、「全ての見出しがこの場所は僕らのいるべき場所じゃないと、僕らに思い出させる」という歌詞のある"Where Is Home?"などがそのいい例だろう。疎外感や社会的な苦しみといった都会的なテーマは、音楽にもマッチしていると思う。

 

 しかしその中でも、"Uniform"や"Sunday"など、音楽面で温かみを感じられる曲も多い。むしろ冷たさと温かさの対比と融合がかなりうまく表現されていて、どちらもがお互いを引き立てているように思う。特に"I Still Remember"は昔の関係を懐かしむラブソングで、どこか哀しくどこか喜びに溢れているような、曖昧だけれども確固とした感情をよく表せていると思う。

 

 問題点と言えば、アルバムを通して聴くと少し眠くなってしまったし、音楽的には曲調が途中で変わるのがちょっと多いと感じたくらいで、そこまで大きなものではなかった。とてもいいアルバムだったと思う。少し人を選ぶかもしれないアルバムだが、ぜひ聴いていただきたい。若々しさと、若さゆえの葛藤がよく融合したような、そんなアルバムである。9/10だ。

 

 (余談であるが買うならぜひ日本盤のCDを買っていただきたい。あまりアルバムの雰囲気に合わない"Flux"が収録されておらず、その代わりボーナストラックとしてかなりいい曲の"We Were Lovers"と"England"が収録されている。)

スコット執筆