Zamok Lucie "we all hate you zamok lucie" レビュー

asteriskrecords.bandcamp.com

 

今回のアルバムレビューは、Zamok Lucie の we all hate you zamok lucieです。

Ryougokuと信乃の二人で、聴いて感じた事などを書き連ねていきます。

 

1.jungmann

 R:シンプルなベースライン、透き通ったシンセのコード。無駄がなく包み込み、音に厚みが感じられる。どこか民族的なリズムも感じられる。不思議な曲だがそこには不思議な心地よさもある。

 信:浮遊感のあるメロディーに、ぼんやりした感じのシンセの音がかぶさる。途中までは一定のメロディーを繰り返す形だったが、途中から少し変化が加わり、一度静かになる。これで終わったかと思ったらまた先ほど聴いた感じの音が蘇る。明るくはないが暗くもなく、なんだかよく分からない一定の雰囲気が漂う。

 

2.Agamemnon Interlude

 R:モジュラーシンセの温かみのあるサウンドを最大限に活かしており、音の揺れを存分に楽しむことができる曲である。シンセが前に出てくる曲だが、コーラスにも注意して聴いてもらいたい。シンセと織りなすハーモニーは極上の響きをもたらす。決まったリズムで繰り返し聴こえる人間の息のようなサウンドが、曲全体をまとめ上げている印象だ。

  信:真夜中の静かな砂浜にでもいるような感覚を体感できる。シンプルな楽器構成で静けさが感じられるが、シンセサイザーによる人のコーラスの様な音は不気味に目立っている。

 

3.XČ

 R:広いホールでベルを鳴らしているような音。そこからジャンルの壁をこえた様々な音が鳴り響きます。ジャズドラムから始まりアグレッシブなシンセソロ、そして激しいドラムソロ。最後はまたベルの音で終わる。実験的な音楽であり、うまくまとめ上げられている。

 信:古ぼけたオルゴールが不安定な音色を奏でているような音から始まる。静かな曲かと思わせてから、いきなり前触れもなくテンポの速いドラムが入り、不意を突かれる。それからは、予測のできない変化が色々と起こっていく。ドラムやシンセサイザーの音は変化に富んでいるが、オルゴールの様な音のメロディは全体的に使われているため、ある程度まとまりはある様に感じられた。激しさはあっても明るさは無く、もの悲しいようなムードが全体にあり、そこに不気味さを覚える場面もあった。

 

4.*​~​*

 R:巧みなディレイが一番の聴きどころだ。右左からポツポツと聴こえてくる電子音。左右に溶け込むように消えていくメロディライン。Zamok Lucieの作り出す美しく品格のあるハーモニーが色濃く表れている。

 

5.捷

 R:奇怪なシンセ、そして不安定なハイハット。この曲が辛うじて音楽として成り立っている理由、重低音のシンセベースだ。まさに縁の下の力持ちと言うべき存在だ。土台がしっかりとしていることがいかに重要か再確認させられた。

 信:気味が悪く不安定な音色がひたすら続き、それにシンセベースとハイハットによるある程度定まったリズムが合わさっている。暗い曲ではないが意味の分からない明るさがあり、そこに独特の怖さがある。3分45秒ある割には変化がなく、その間ずっと不安定な音色を聴き続ける必要があるため、この音にあえて慣れようとはせず、最初に聴いた時の新鮮味を継続できた方が楽しめるだろう。

 

6.IIII 

 R:眠くなりそうでならない絶妙な不協和音。異次元の世界に来たかのような気持ちにさせてくれるが、あまり心地が良いとは言えない。静けさの中にある不気味さを表現しているのだろうか。繰り返し聴いていると気分が悪くなってきた。何度も繰り返して聴く方は注意が必要だ。

 信:ホラー映画のサントラにでもありそうな音楽。シンセのみのシンプルな音作りだが、不穏な雰囲気が良く出ている。これを聴きながら寝ると悪夢が見られそうだ。

 

7.ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ

 R:ビートはボップで大好きなのだが、こうも永遠と続けられると飽きてしまうのが人間である。注意深く聴いて楽しむよりも、BGMとして考えるのが良さそうだ。重低音のベースが心地よく広がりハイハットが引き締めている印象。バランスよくまとめ上げられている。

 信:これ程2分34秒を長く感じさせる曲は無いかもしれない。何かの高い音が反響しているトンネル内で、一定のリズムで歩いているような感じ。

 

8.D = Cd * A * .5 * r * V^2 

 R:2曲目同様モジュラーシンセを存分に生かした曲である。Zamok Lucie氏はモジュラーシンセの扱いに非常に長けており、この作品もその才能が存分に発揮されている。3三拍子で構成されているのも面白い。

 信:ドラムが一定のリズムを刻み、その上に掴みどころのない様なピアノのメロディーがなり続く。どの部分を再生しても同じような感じだ。しかし、長い間鳴り続けるドラムが突如途切れ、不穏な雰囲気になったり、ピアノのメロディーが自然に変化していったりするので、意識して聴くと変化がよくわかる。

 

9.... ..- .. -.-. .. -.. . / .. ... / .--. .- .. -. .-.. . ... ...

 R:リズミックなベースと動き回るソフトシンセを楽しむ曲。全体的に下の帯域に音が集中している中、シンセハイハットの硬質でハイの強いサウンドがバランスを取っている。作業音楽としてはとても良いのではないだろうか。

 信:シンセの音の良さを上手く引き出せていると思うが長い。一定のリズムに乗ってアドリブの様だがなめらかで自然なシンセのメロディーが流れる。

 

10.  ‘v` 

 R:まさに題名の顔文字の雰囲気の曲調だ。ソフトシンセのコードの上を丸いミュートがかかったようなベルの音が跳ねる。イントロでよく聴くことのできるモジュラーシンセがバックで常に流れているのも面白い。2つの曲を同時に聴いているようだが、うまく絡み合っている。

 信:一定のリズムに合わせてシンセの音が歯切れよく流れる。途中から始まり途中で終わるドラムの音もシンセによく合っていて小気味いい。

 

11.po

 R :このアルバムで最も重要な曲の1つだろう。リズミックなベース、ドラム。クラブで流したら大盛り上がり間違いなしだろう。明瞭なモジュラーシンセのサウンドも良い。曲構成もよく練られており、緩急がはっきりしていて曲に入り込みやすい。耳に響くような嫌なサウンドが一切無いのも聴きやすさに大きく影響しているだろう。

 信:このアルバムで最も一般受けしそうな分かりやすさとノリの良さがある曲で、他の曲に有った「暗い」、「不穏」といった要素が無い。シンセの小刻みな音色が良い。

 

 

12.fuck off

 R:アルバム最後に置かれたこの曲。冷たい音色、どこか悲しさのあるメロディ。Zamok Lucie氏の表現力が存分に発揮されている作品だ。アコースティックピアノを前面に押し出し、透明感がある。ピアノを邪魔しないパンチがありつつも棘の無いドラムの音色も良い。アルバムを締めくくるのにふさわしいムードが作り上げられた曲だ。

 信:11曲を聴き終わった疲れた耳を癒してくれる様な柔らかさのある曲だ。綺麗な音色が魅力的。1分10秒を過ぎた辺りで急に曲調が変わる。2つの曲をテープを雑に繋げたようで、何が起きたのかと思う。その後は大きな変化がなく、よく言えば時間の経過を感じさせず、ゆったりと鑑賞できる。そして唐突に終わる。