ファンキー・プリンス ”おやすみ大阪” レビュー

品番:SV-843

発売:1969年5月

ファンキー・プリンスは、1968年3月というGSブームの絶頂期に結成されたバンドで、「ナンバ一番」に出演し人気となり、69年5月にこの「おやすみ大阪」でデビューしました。

この「ナンバ一番」というのは、当時大阪で最も力のあった音楽喫茶で、ザ・ファニーズ(後のザ・タイガース)やザ・タックスマンなどが上京しレコードデビューする前にレギュラー出演していた。オーディションに受かった地元のバンドや歌手の他に、東京などから来た有名な歌手やバンド(ザ・ゴールデン・カップスやザ・フェニックスなど)も出演している。昭和44年9月に閉店し、建物は他の店舗として使われた時期もあったようですが、20年以上前に解体され現存していない。

レコードリリース後は、大阪のナンバ一番やミュージックプラザ、東京の新宿アポロなどに出演していた。レコードは1969年リリースの2枚のみですが、1968年から1971年まで3年ほど活動していたらしい。

日本ビクター株式会社は、1967年10月に「VP」というGSがメインのポップスの規格を新たに作ったのにも関わらず、このバンドのレコードは従来からある歌謡曲がメインの「SV」になっている。「VP」のダイナマイツやオックス、4.9.A、モップスなどとファンキー・プリンスをあえて分けた事から、ビクター側に最初から歌謡曲路線で売り出そうという考えがあったと考えられる。

このバンドは2枚のシングルは、いずれも歌謡曲系の曲です。

 

【おやすみ大阪(作詞:山上路夫 作曲:大野正雄 編曲:近藤進)】

ファズをメインに使っているものの、ザ・モップスの「ベラよ急げ」の様な荒々しさとは対照的な丁寧な演奏になっている。歪ませたりしているが、美しさが感じられる音に仕上がっている。

大阪が舞台なだけあって、途中歌詞に関西弁が使われている。「いややわー」などと絶叫する部分がとても印象的でそこだけ聴くとふざけたコミックソングかと思うが、他は真面目に作られている。演奏も歌もメリハリがしっかりしていて、盛り上げ方が上手い。絶妙に表現力の高いコーラスワークから、ナンバ一番で人気面でのトップになっただけの実力が感じられる。

 

【港で二人は(作詞:山上路夫 作曲:大野正雄 編曲:近藤進)】

A面と変わってこちらは夜の神戸が歌詞の舞台になっている。カクテルが登場したりとA面よりも大人っぽい世界観の恋愛ソング。

演奏や曲調はA面よりもGS色が薄く、歌謡曲色が強い。メロディーの美しさを重視したような仕上がりだと感じる。A面の様なインパクトはなく、あまり新鮮味は感じられないが、歌謡曲の様式美的なものが感じられる。特にストリングスのサウンドは聴いていて気持ちが良い。落ち着いた曲で、夜に一人で落ち着いて聴きたい様な曲だ。

 

【終わりに】

GSブームの末期に発売されただけあって、66年から68年までのGSの楽曲にはなかったような独特さが感じられる2曲です。ロックやR&Bの要素は極めて薄いですが、歌の感情表現が上手く、歌謡曲としての魅力はかなりあると思います。また、当時の大阪や神戸のイメージもなんとなく感じられるような点も良いです。関西では小ヒットしたらしく、価値はあまり高くないので(3000円程度)、気になったら買ってみるのも良いかもしれません。

 

 

アナログレコードどうすりゃいいの? ~保管編~


持っているCDが危険なまでの劣化をし始めショックを受けたスコット、そんなバカタレスコットがアナログ盤についての質問を室伏広治の勢いで投げつける企画最終段。今回はアナログ盤の保管について、レコード収集が趣味な信乃さんに回答してもらいました。

 

Q1 レコードってどうしたら歪まないの?

        ストーブの近く等の熱い所や日光の直接当たる所に置かない事や接地面に垂直になる様に置く事を意識すれば大丈夫だろう。なるべく涼しい所に置くのが良いね。

 

Q2 歪んじゃったらどうすればいいの?

        盤を鉄板で挟んで温めて直すという方法があるらしいけど実践したことはないな。あと歪んだ盤に重い本とかを乗せて放置すると直ったという話も聞いた事ある。グニャグニャなのはもう直せないね。

 

Q3 音飛びし始めたらどうすればいいの?

        ホコリや汚れによるものならクリーニングすれば直るはず。あと針厚を調整すると直ることもある。傷によるものならやや難しいけど尖ったもので傷の部分を整えて直すよ。

何のレコードか忘れたけど音飛びしてる音源を元にレコードを作って売っちゃった事があったらしい。東芝レコードのサンダーバードだったかな。

 

Q4 未開封のまま置いておくのが良くないってほんと?

        通気性が悪くなるからあまり良くないらしいね。あと中身が分からないから、もしかしたら不良品かもしれない。開けると価値は落ちてしまうけどね。

 

Q5 ボックスセットの中のってどうすれば上手に保管できるの?

        箱から出して普通のレコードと同じように保管するのが一番扱いやすいかな。BOXセットの箱が擦れて角とかがボロボロになってるのをよく見かけるから、箱にカバーを付けたり、箱だけ押し入れにしまうのが良いと思う。

 

Q6 棚に置くときにキツキツに置いていいの?

        大丈夫だと思うよ。ただ出し入れしにくいのと、ジャケットが擦れるから袋に入れた方が良いね。シングルの場合はジャケットの紙と盤の入ったスリーブの間に厚紙を入れて補強するとシワが付きにくくて良いよ(下の写真)。

 

Q7 部屋の環境とかって目安はあるの?

        湿度が高い所や窓際はカビの原因になり兼ねないからあまり良くない。なるべく熱い所を避けて涼しい場所に置くと良い。聴かないレコードでも時々盤を出して濡れたり汚れてたりしてないかチェックすると良いと思う。

 

Q8 海賊盤って劣化しやすかったりするの?

        材質が悪い場合があるからそういうのはビニール焼けとかしやすいね。物によると思うけどね。大手メーカーのでも材質が悪くてビニール焼けしてる物が多い盤とかある。

 

Q9 壁に掛けるのってして大丈夫なの?

        置き方によっては反りやすくなるから盤を出してジャケットだけ飾る方が良いかも。

 

アナログレコードどうすりゃいいの? ~音質編~

JALの機内で貰えるイヤホンを使用していた時期もあった音質に全く興味のないスコットが、アナログ盤についての疑問をマッハ2でぶつける企画第二段。今回も回答役はレコードコレクターかつGSマイスターの信乃さんです。

 

Q1 カラー/ピクチャー盤と普通の黒いのって音質違うの?

 1960年代から1974年辺りまで作られた東芝の赤盤は、普通のと違う原料が入っていてホコリが普通のより付きにくいようだね。他の80年代に流行ったような色々な色のレコードは、普通のとの違いはあまりないと思う。    

 銀河鉄道999の懸賞のピクチャー盤を持ってるけど、普通のシングルと音質違うとは思わなかったな。物によるかもね。ただ、中古で買うとき黒いのより傷が見えずらいというのはあるね。

      

 

Q2 重量盤って普通のと音違うの?

  厚い分盤が歪みにくいのと音溝を厚くできるっていうメリットがあるけど普通のとの音質の違いは俺には分からないな。

 

Q3 LPなのに45回転のも違うの?

  33回転より回転数が速いから記録できる情報量が多くなって音質が良くなるっていう理屈。音質の違いが分かるかは人それぞれって感じかな。安物のプレイヤーだと違いが分からないかも。

 

Q4 プレーヤーとスピーカー、こだわるならどっち?

        スピーカーかなあ。ヘッドホンで聴くことが多いならプレーヤーだと思う。

 

Q5 針ってどのくらいで交換するの?

        使用頻度によるけど、SP盤じゃなければ1年に3回か4回くらい変えればよいと思う。

 

Q6 昔のレコードはモノラルの方がいいってホント?(特にビートルズ

        モノラルがメインに扱われていた頃のはモノラルで聴くのが良いと思うけど、まあ人によるね。60年代初頭まではモノラルの機材を持つ家庭が多かったようだから、その当時の人々が聴いた音で聴きたければモノラルの方が良いと思う。

ステレオの方が楽器一つ一つの音の聴き分けはしやすい。初期ビートルズだと、ジョージマーティン達が製作当時に聴いていたのがモノラル音源だったらしいね。

 

Q7 ホコリ取りとかって買った方がいいの?

  無くてもレコードは聴けるけど、ホコリの付いた状態で再生するとノイズが出るし、盤にも針にも良くないから買った方が良いね。レコードクリーニングは、人によって意見が大きく違うから(たとえばスプレー式は良いとか駄目だとか)自分で色々と試してみるのが良いと思う。

 

Q8 レコードプレーヤーの下に敷くマットって必要?

  あった方がレコードがすべって動いたりしないから安定した回転速度で再生できる。まあ無くてもあまり変わらないけどね。プレイヤーに純正でついてる場合が多いからあまり気にしなくてよいと思う。

 

Q9 買っちゃいけないタイプの音響機器ってある?

        イコライザーやスピーカー内臓の定価1万円位のレコードプレーヤーは音悪いからやめた方が良いかも。あと分解しなくてもレコードやカセットテープの回転数を調整できる物の方が調整狂ったときに楽だね。

アナログレコードどうすりゃいいの? ~収集編~


アナログ盤について回ることくらいしか知らないアホタレノービススコットがレコードコレクターの信乃に初心者にありがちな気のする質問をぶつけるコーナーです。

 

Q1 レコードの平均的な価値ってどう知ればいいの?

  レコード屋が付けてる価格やヤフオクの落札価格等を見ていくとわかると思う。集めていけば自然と分かってくるよ。細かい違いによって大きく価格が変わる場合もよくあるから、どういうバリエーションがあるかとかを知る必要もあるね。

 

Q2 10インチ盤はやっぱり手に入れにくいの?

  うーん、物によるなあ。60年代前半までは10インチのアルバムも多く作られてたけど60年代後半以降はあまり多く作られてないね。

 

Q3 レコードの品質を見るとき気を付けるべきところは?

  付属品があるかを確認するのが大事。帯や歌詞カードだけでなく、ブロマイドやポスター、ステッカー、アンケートハガキなどがある場合もあるから何があって何が欠品してるのかチェックすると良い。

シングルレコードの付属品の例

中森明菜「禁句」に入っていたかなりローカルな付属品

あと、盤の溝や穴の周辺の傷とか、ジャケットの破れや変色があるかを確認できるなら確認したい。

ビートルズの60年代の日本盤とかは帯付きが人気で高い分、帯なしは2000円以内で買えるのが多いからあえて帯なしを買うのもありかも。

 

Q4 海賊盤と本物を見分ける楽な方法ってあるの?

実際にオリジナルと海賊盤を見て印刷の質感や色、相違点を調べるのが一番分かりやすいかな。ネットで解説してる人もいるからそういうのを見るのも良いかも。

 

Q5 安全な輸送方法ってどんなのがあるの?

レコード配送専用の段ボールがあるからそれが使われてると安全だと思う。ヤフオクとかで個人から買う場合は運次第。普通の封筒にシングル1枚いれただけの梱包で発送されたこともあるよ

 

Q6 海外から買う時に気を付けることは?

海外から買わないから分からんなあ。

 

Q7 店で買うのとネットで買うの、メリットとデメリットは?

店だと、状態確認ができるから思ってたのと違うみたいな事は少ないな。あと、整理せずに売るような店ならレア盤が数百円で売られてる事も稀にある。ネットより時間や体力を使うのがデメリットかな。

ネットだと、ある程度流通してる盤なら数分で買えたりするから楽ではある。ただ、多くは送料がかかるのと、数万円の価値の盤が数百円で買えるみたいな奇跡は店で買う場合より起きにくい。写真だと綺麗に見えても実物は写真写りが良いだけで、シミだらけだったりすることもたまにある。地方の限定発売のレコードは、ネットで買うしかなかったりするね。

 

Q8 再発とオリジナルはどっちを買うのがいいの?

再発とオリジナルだと音質が違ったりするから当時のサウンドを聴きたいと思うならオリジナルを買うべき。あと、再発とオリジナルを比べると、ジャケットの紙の厚みや、色合い品番や価格表示が変わってたり誤植を修正してあったりするから、そういうのが気になるのならオリジナルだな。オリジナルの価格が高騰してるなら再発を買うのも良いかもね。

 

Q9 蚤の市って本当にいいの転がっているの?

物凄いレア音源を発掘したという人もいるけど、大体はレコード屋や中古屋とそんなに変わらないんじゃないかな。ただ、ちゃんと整理せずに雑に1枚100円みたいな感じで売ってたら、もしかしたら良いのが混ざってるかも。

 

4.9.1. "ウォーキン・ザ・バルコニー" レビュー

品番:HIT-1010

発売:1967年7月

  

このレコードは、4.9.1.の3枚目のシングルだ。よんきゅういちと書いて「フォー・ナイン・エース」と読む。

GSのシングルは、作家が作った曲をGSが歌う場合も少なくないが、このバンドのシングル曲はオリジナルが多い。このレコードも製作の多くをメンバーが手掛けている。それに対しアルバムでは「花嫁人形」や「ダンス天国」など色々な曲をカヴァーしている。1967年7月は、丁度グループ・サウンズの人気がうなぎ登りの時期で、このシングルも小ヒットしている。そのため、4.9.1.のレコードの中でも入手しやすく、並品なら2000円ほどで購入できる。ただ、このレコードには、そっくりの再販盤(品番:KO6S-427)があるので、購入の際は品番に注意する必要がある。(フィンガーズ 「愛の伝説」、ビーバーズ「君なき世界」もセットで再販されている。)

 

【A面:ウォーキン・ザ・バルコニー(作詞・編曲:滝イサオ 作曲:司薫)】

当時の記事によるとバンドのイメージを明るく変えることを意識したらしい。確かに、それ以前の2枚のシングルよりも派手で明るい曲と歌詞になっている。「ウォーキン」というステップを取り入れた曲で、ウォーキンについての図を用いた説明が歌詞カードにある。当時流行ったかどうかはわからない。

童謡っぽい感じのメロディーの歌と城アキラ氏の物凄いシャウトのアンバランスさに初めて聴いた時は何だこれはと思ったが、何度も聴くうちにその魅力が分かってきた。独特の格好良さがある。リズムを強調した演奏が心地よく、間奏のギターのフレーズも滑らかで聴いていて気持ちが良い。

 

【B面:傷だらけの叫び(作詞:境一美, 水上達哉 作曲:司薫 編曲:滝イサオ)】

こちらは、A面の陽気さとは真逆の思い詰めた様な重い歌詞になっている。元々寺内企画に所属していたバンドらしく、寺内タケシ氏の影響がギターのミュートやアームの使い方に感じられる。シンプルでインパクトには欠けるが、エレキインストのアルバムを出すバンドらしい演奏に魅力がある。

 

さよならポニーテール "空も飛べるはず/ビアンカ/恋するスポーツ" レビュー

SAYONARA PONYTAIL - Sayonara Ponytail - Sora Mo Toberu Hazu / Bianca /  Koisuru Sports (2CDS) [Japan LTD CD] ESCL-3902 - Amazon.com Music

さよならポニーテールのメジャーデビューシングルには、夏っぽくて爽やかでどこか懐かしく甘酸っぱいという、グループのサウンドの特徴を存分に発揮させた4曲が詰まっている。

 

[A面:空も飛べるはず]

スピッツの同名曲のカバーであり、フジテレビ系列のアニメ「つり球」のエンディングにもなった曲である。アコースティックギターを基盤としながら、ベースやピアノ、オルガンにドラムまでもがあたかも踊っているかのような、メロディックな演奏をしていてとてもいい。2番からはエレキギターも前面に出てくるのだが、どれか一つの楽器が目立ちすぎているだとか、ミックスがうるさくなっている感じは全くせず、まとまりを保っている。特にギターソロのあたりは素晴らしく、大変よく音が構成されていることが感じられる。

けれどもこのカバーによって加えられた最大で最高のタッチは、声の重なりであろう。イントロのハミングから始まり、ヴァース中でも躊躇なく歌う声の変わっていき、あるところでは重なりあるところでは個別の声だけになるのは、ユニークでありながらとても綺麗に施されており、独特な雰囲気を醸し出している。オリジナルに匹敵するくらいの出来であると思う。もしさよならポニーテールがどのようなグループかを代表する曲があるとすればこれであろう。

 

[A面:ビアンカ]

こちらは「空も飛べるはず」よりもロック調な曲であり、同名の雑誌とのタイアップ曲にもなった曲だ。アップテンポな曲調に心地よい歪み具合のギター、そして原動力とも言えるオルガンは、いわゆる邦ロックらしさを残しながらもビーチ・ボーイズなどのクラシックロック色も残しているようで新鮮かつ親しみを持ちやすい音になっている。かなりキャッチーなギターリフと途中で入る手拍子が個人的には大好きな曲だ。この曲もやはり声の重ね方やそれぞれの声の使い方がとても上手であり、特にブリッジ部はこの曲の明らかなハイライトである。

けれども完璧とまでは言えない。イントロではギターの音が必要以上に存在するし、ドラムの音は悪くはないが良くもない。そしてオルガンはちょっと遊びがありすぎて、まとまりがないようにも感じてしまう。しかし普通に聴く分には気にはならないレベルなので、それがあるから最悪だとはならないことは注意してほしい。

 

[A面:恋するスポーツ]

まさかのトリプルA面です。前の2曲とは違って少しエレクトロポップ風の曲で、ちょっぴりグリッチーなピアノの音がとても素晴らしいものになっている。コーラスはリバーブを大量に含んで声としてよりも曲の音を深める楽器のような役割をこの曲では担っているようにも思えるし、途中から入ってくるシンセと共にこの曲の甘い雰囲気を増幅させている。途中のドラムブレイク的なパートもとてもよく、かなりポップでキャッチーな曲になっている。そこまで気になる点もなく、かなりいいJポップソングだと思う。

 

[B面:虹の橋]

これまでの曲とはこれも全く違い、アコギメインのどこかセンチメンタルな曲になっている。ここでもやはり重なる声が独特な雰囲気を醸し出しているし、ゆっくりしたどこか寂しげな空気感は少しノスタルジックにも感じるような、そんな曲である。正直そこまで特筆すべきことはなく、いい曲なのだが少し単調な感じもして、いいB面曲ではあるがA面にはなれない曲を体現したような曲であると思う。最後にその単調さを破るのだが、そこは素晴らしい出来であるし、そこがあるから複数回聴こうと思える曲である。

 

[総評]

ジャンルやスタイルは全部バラバラなのだが全体的には出来も音もかなりよく、さよならポニーテールの強みを濃縮したかのような4曲が集まっている感じがした。完璧とまでは言えないけれども至る所で光るものを存分に発揮しており素晴らしいものに仕上がっている。ぜひ聴いてもらいたい。9/10だ。

ザ・ダーツ ”ケメ子の歌” レビュー

品番:LL-10047-J

発売:1968年

ケメ子の歌」は、ザ・ダーツのデビューシングルで、ビクターレコードのGS ザ・ジャイアンツとの競作でリリースされた。ジャイアンツ版の曲名は「ケメ子の」となっている。ザ・ジャイアンツの方が若干早かったが、ほぼ同時期にリリースされ、2枚とも大ヒットを記録した。ザ・ダーツ版は100万枚を売り上げ、オリコン最高2位を獲得したため、60年代後半を代表する曲として扱われている。両方とも売れたため、レコード屋で1枚100円程度で簡単に手に入れられる。

 

当時の雑誌によると浜口庫之助氏が「ケメ子の歌」を発掘したらしい。その縁で、ダーツの2ndシングルの作詞作曲を依頼され、「いつまでもスージー/君は恋の花」が生まれた。浜口氏のダーツを立派なグループサウンドに育てたいという思いから、この2曲は正統派のフォークロックとなっている。安易にケメ子の歌の二番煎じのような曲をリリースせず、正統派路線を選んだというのが素晴らしい。それに対し、ザ・ジャイアンツは、ケメ子の唄の次のシングルもアングラ路線の曲になっている。

 

臨時発売だったためかレコードジャケットは2色刷りで、1968年にしては古臭い印象を受ける。途中からジャケット左上に「オリジナル盤」という表記が追加された。この頃はヒットするとジャケットを新しく作り直す事もよくあったが、この曲では作り直さなかったようだ。

 

【A面:ケメ子の歌】(作者:不詳 採譜補作:浜口庫之助

歌詞はくだらないが、素朴で淡々としている所が滑稽で良い。「帰って来たヨッパライ」で話題になったテープの早回しによる虫声が使われている。

様々なアーティストがカバーしているので、聴き比べるのも面白いかもしれない。ただ、10年ほど前からはテレビでこの曲が使われたり、カバーされたりする機会が少なくなった。

 

【B面:ブーケをそえて】(作詞:堀井正次 作曲:土森勝則)

A面はゆったりとしたアングラソングだったが、B面は打って変わって正統派のGS路線の歌詞で、ロック調の激しめな曲調となっている。初めてこの曲を聴いた時は、A面との音楽性の違いに驚いた。B面もA面と同じような素朴なコミックソングだろうという想像を良い意味で裏切ってくれた。演奏は粗削りだが、その分生演奏の様な勢いと迫力が感じられる。作曲者はこのバンドのメインボーカルとドラムを担当している。

 

初回プレスでは、盤の曲名表記に誤植があり「ブーケをこえて」となっていたため、その後訂正された。

 

    

           ↑ こちらが曲名の誤植だ ↑

 

B面でこんな格好良い曲をやっていても、結局ケメ子の歌のイメージが強すぎたため、以降の正統派路線の2ndシングルはヒットしなかった。その後は、メンバーチェンジをしてムード歌謡路線のシングルを1枚リリースして1969年に解散したらしい。元々はベンチャーズのカバーを行っていたというので、エレキインストも聴いてみたかった。